この法案には、メッセージアプリにエンド・ツー・エンドの暗号化を破ることを事実上強制しかねない措置や、児童の虐待画像を含むメッセージのスキャンを強制する条項が含まれている。テック企業は以前から、この法案がバックドアの設置を強制するもので、ハッカーやならず者国家による攻撃を誘発しかねない脆弱性を生むと主張してきた。一部の企業は、政府の要求に応じるのであれば、英国を離れた方がましだとも述べていた。
政府はこの法案の審議が終わりに近づいたときに、一定の譲歩に応じる姿勢を見せ「技術的に実現可能であり、テクノロジーが最低限の精度を満たしていると認定された場合にのみ、この特定の要件を実施する」と述べた。
しかし、英国の内務大臣は9月20日にこの問題を再燃させ、フェイスブックメッセンジャーでの暗号化を展開しないようメタ社に要求した。
「メタは、自分たちのプラットフォームを悪用から守るという保証を提供できていない。彼らは、暗号化の計画と並行して、適切な安全策を開発しなければならない」と、スエラ・ブラヴァーマン内務大臣は述べている。
しかし、テクノロジー企業はこの要求に屈しない姿勢を見せている。内務大臣によるメタへの新たな攻撃を受けて、シグナルの社長のメレディス・ウィテカーは「オンライン安全法案に記された対策の実施を強制された場合、英国から撤退するという脅しを実行に移す」と述べた。
「政府の要求に応じてバックドアを作るか、それとも撤退するかの選択を迫られたら、我々は撤退する」とウィテカーは述べている。
メタもまた、BBCに送った声明の中で「当社の顧客は、彼らのプライベートなメッセージを当社に読まれてもいいとは思わないはずだ。圧倒的多数の英国人がすでに、ハッカーや犯罪者からの攻撃を避けるために暗号化を使用するアプリに依存している」と述べている。
英国の世論はどちらの味方か?
問題は、次の総選挙を控えた英国政府が、この法律をどこまで推進する用意があるかということだ。20日のBBCのインタビューで、ブラヴァーマン内務大臣は「政府はこの新たな法律に含まれる広範な権限により、英国情報通信庁(Ofcom)を通じて、特定の状況下で必要な措置をとるよう企業に指示することができる」と警告した。しかし、彼女はその権限を実行に移すとは明言せず「私はむしろ、これらのソーシャルメディア企業と建設的に働きたい。彼らは私たちの暮らしの中で重要な役割を果たしているのだから」と述べた。
政府は今後、子どもたちを守るという名目でビッグテックに立ち向かう覚悟のある政府を有権者が好意的に見るか、それとも何百万人もの人々が使うアプリを強制的に撤退させない政府を選ぶか、決断を迫られることになる。
(forbes.com 原文)