目標金額を5000万円に設定した前例がないため、達成する可能性が低いということと、目標を達成しなかった場合にはお金が入ってこない方式で、クラウドファンディング会社の手数料収入もゼロになることが理由だったようだ。
厳しい状況の中、クラウドファンディング会社のkibidangoが「やりましょう!」と実施してくれて、結果7900万円(約2400台分)の予約を集めることができ、ようやく量産化に漕ぎ着けた。
銀行からも評価されず
クラウドファンディングが終了した後も「購入したい」という声が絶えず、予約分の台数よりも大量に生産する必要が生じた。しかし、売上の7900万円は量産設計などの開発費に使ってしまったために、資金がなかった。そこで地方銀行に融資の相談に行ったのだが、門前払いされてしまった。信用金庫は話を聞いてくれたが、1円も貸せないという結論だった。
クラウドファンディングの予約購入という仕組みが、銀行の査定システムの評価対象に該当せず、7900万円の売上は製品を納品するまで「実績」と認められないからだった。
通販サイトでの「前払い予約」に支えられ、ようやく完成
初期ロットを計4000台に決めて工場に発注したが、その時点で銀行の残高が1000万円ほど足りなかった。通販サイトをオープンし、購入希望者に代金を前払いで支払ってもらうという奥の手を使った。幸い、通販システムの運営会社「Shopify」が状況を理解してくれ、売上の20%を運営会社にプールすることで、前払い予約を実施させてもらえたのだった。
しかし、前払いの売上が1000万円を超えないと製品は納品されない。
ギリギリの状況だったが、なんとか予約が1000万円を超え、4000台を完成させることができた。
ものづくりベンチャーがチャレンジしやすい仕組みを
数十年前にはベンチャー企業が電子機器を生産して販売することは不可能だったが、EMSやインターネットの発展で、小規模の会社でも、ものづくりにチャレンジしやすい土壌ができた。とはいえ、多額の資金が必要で、支援する仕組みはまだ時代に追いついていないことをゆーいち氏は感じたという。
インスタコードのように、世界で評価されるようなイノベーティブな製品を日本から生み出すには、ものづくりベンチャーの挑戦をサポートする仕組みも変わっていく必要があるのではないだろうか。
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