日本のものづくりベンチャーがぶつかる「壁」
しかし、その過程では行政や銀行からの支援を受けられないという、日本のものづくりベンチャーが抱える構造的な問題に悩まされてきた。ものづくりはウケが悪い?
インスタコードを量産するには5000万円以上の費用が必要だった。最初に投資家やVCに相談したが、「ものづくり」はウケが悪いことに気がついた。
製造業はどんなに売れても、売上に比例して製造原価がかかる。製品が市場に行き渡れば、成長もストップしてしまう。一方、IT系のサービス業ならば、ユーザーが増えれば増えるほど利益は倍増する。そこに大きな違いがあった。
また、国内市場を基準に判断されてしまう問題もあったという。
ものづくり補助金、他の助成金も対象外 ベンチャーのスピード感が原因?
行政が提供している、ベンチャー企業を金銭的に支援する様々な補助金や助成金も、ひとりメーカーにとっては厳しいものだった。リスクの高い設備投資を行わず、EMS(製造受託企業)を活用したが、「ものづくり補助金」は基本的に「設備投資」を支援する補助金のため、対象にならない。
各自治体で「製品開発や改良に関する助成金」が用意されている場合があるが、それらも対象から外れてしまった。
これらの助成金の多くには、募集期間が1年のうち1カ月間しかなく、申請から半年後の審査完了まで事業に着手してはいけないというルールがある。もし採択されたとしても、当初の計画通り事業を進めないと助成金をもらえない。
インスタコードは「計画→設計→実装→テスト」の小さなサイクルを繰り返しながら改善を重ねる「アジャイル開発」という手法で、スピード感を持って、失敗しないように開発を進めてきた。このように製品化を進める手法は、助成金の対象にならないのだという。