政治

2023.09.19 08:00

BRICS拡大は中国の勝利と言えるのか?

遠藤宗生
分裂はBRICS内にとどまらない。加盟国の多くは、米国や国際社会との関係性が大きく異なる。中国は米国と戦略的に敵対しているが、国際経済秩序の柱の一つだ。一方、ロシアとイランは国際経済秩序から爪はじきにされており、間を取り持つ役割を果たしているサウジアラビアも、いすれは離反する可能性がある。これに対し、インドは経済的にも安全保障面でも米国と緊密な関係を築いている。アルゼンチンとブラジルは反米感情が根強いにもかかわらず、中国よりも米国との結びつきの方がはるかに強い。

仮にこれらの非常に重大な戦略的課題が解決されたとしても、BRICSを通じた中国主導での世界のエネルギー支配を予期する勢力にとって最大の問題は、その目的を達成するにはBRICSは冗長な枠組みだということだ。中国の「一帯一路」構想のほうが、扱いにくいBRICSの仕組みでは決して成しえない大きな影響力と支配力をふるえる。たとえ中国と他の加盟国が国家レベルでそうした関係の制度化を決意したのだとしても、その試みに対応する機関としてはすでに上海協力機構が存在する。エネルギー供給国にとってはOPECのような別組織のほうが、国際市場や欧米の消費者に対してよほど大きな見返りと影響力をもたらすことができる。

さらに、BRICSには今のところ独立した機関、求心力のある大義名分、イデオロギー的基盤、条約ネットワークが存在しない。BRICSは根本的に分裂しており、集合写真を撮影する機会の域を出ていない。

加盟国の半数は米国による秩序の打倒を望み、残りの国は誰とでもビジネスをしたいと考えている。半数は他の加盟国を嫌っており、その動機となる恐れの多くは陣営の外ではなく内部から生じている。BRICSは北大西洋条約機構(NATO)の敵対勢力でもなければ、主要8カ国(G8)や主要20カ国・地域(G20)に代わる存在でもない。NATOがいかに身動きのとりにくい同盟であろうと、加盟国同士が代理戦争をしたり国境で小競り合いをしたりすることは(トルコとギリシャの緊張関係は別として)ない。

中国、ロシア、イランはいずれも、米国の優位性に対抗し、西側諸国を分裂させようと画策する敵対勢力かもしれないが、心配せずともBRICSを介してそれを達成することはないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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