これらのエネルギー資源の組み合わせは、中国が主導権を握らんとするBRICSにとって朗報といえそうだ。BRICS全体で世界の石油供給の42%を掌握し、中国が牽引するレアアース精製の独占体制も、豊富な資源投入によって強化されるだろう。しかし、現在の世界のエネルギー秩序の崩壊を歓迎する面々も、BRICSにそのお膳立てを頼みたくはないかもしれない。
BRICS内部には早くも分裂や異論が生じている。アルゼンチンの加盟は、現政権が前向きな一方で、来る大統領選挙の主要候補者は予備選で勝利したハビエル・ミレイ下院議員を含むほとんどが不参加を公言しており、実現するかは不透明だ。エチオピアも、現政権は加盟決定を「偉大な瞬間」とたたえているが、アビー・アハメド大統領の権力基盤は対抗勢力に揺さぶられ、お世辞にも安定とは程遠い。
BRICSの根本的な問題は、加盟国の多くが基本的に戦略的ライバル関係にあることだ。最も友好的なライバルであるアルゼンチンとブラジルでさえ、経済的な不一致に絶えず悩まされている。イスラム教スンニ派とシーア派をそれぞれ代表する大国であるサウジアラビアとイランは、ようやく関係を正常化したばかりで、つい最近までシリアとイエメンで代理戦争を行っていた。どちらもいつ再燃してもおかしくない。
ほんの10年前までパートナーと見なされていたサウジアラビアとUAEの関係には、今やあからさまな亀裂が生じている。かつては米国主導の安全保障体制と開発という共通の必要性によって結束していたが、現在は互いの国内改革の方針や、UAEがI2U2の枠組みを通じて米国やインドと協力することをめぐって、公然と意見が対立している。
インドと中国は、対パキスタン政策、国境紛争、中央アジアや東アフリカで競合する経済的影響力などの点で根本的な戦略的ライバルだ。インドのナレンドラ・モディ首相は、BRICSに中国と非常に密接な国々が加わることに懸念を表明した。