経済・社会

2023.09.17 07:00

弾切れのプーチンと金正恩、本当に困っているのはどっちだろうか

縄田 陽介
それよりも、北朝鮮が解決しなければならないのは貧困の問題だろう。国連児童基金(ユニセフ)が今年7月に発表した報告書によれば、2020年から22年にかけ、北朝鮮で約1180万人(全人口の45,5%)が栄養失調の状態にある。04〜06年にかけての同調査結果では、栄養失調の状態にある人が全人口の34.3%だったため、20年足らずの間に10%以上悪化したことになる。

金正恩氏は8月21日、西部・南浦市にある干拓地の堤防決壊による被害復旧現場を視察した。その際、正恩氏が膝まで水につかって視察する写真が公開され、関係者を驚かせた。北朝鮮を逃れた元朝鮮労働党幹部は「いくらパフォーマンスとはいえ、最高指導者がそこまでやるのかと驚いた。よほど余裕がなくなっているのだろう」と語る。

もちろん、北朝鮮は日米韓を脅して抑止力とするため、ロシアとの軍事協力の可能性をほのめかし続けるだろう。しかし、足元は激しくぐらついている。

金日成主席の時代、北朝鮮の最高指導者がモスクワを訪れるのは、災害などによってソ連の支援を必要としているケースがほとんどだった。あまり指摘がされていないが、ロシアの最高指導者が2000年以降、北朝鮮を訪れたのは、同年のプーチン大統領だけだ。これに対し、北朝鮮は金正日総書記が01年と02年、11年にロシアを訪問。正恩氏も19年と今回の2度にわたってロシアを訪れた。このうち、モスクワを訪れたのは、01年のケースしかない。外交のプロトコルで考えれば、明らかに、北朝鮮の方が「お願いする立場」にある。しかも、ロシアの指導者が極東などに来たとき、ついでに会ってやっているというのが実情だ。

ロシアの弱みにつけ込んで商売している、というよりも、ロシアの弱みにつけ込んでようやく会ってもらったというところが現実に近い状態なのではないだろうか。

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文=牧野愛博

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