また、2023年にはアパレルメーカーのアーバンリサーチ、スポーツ用品メーカーのミズノ、TENTと藤田金属の4社がタッグを組み、フライパン ジュウの別注オリジナル商品も誕生した。
町工場の仕事の範囲を自分たちで狭めない。面白そうだと思ったら、果敢に挑戦する。その姿勢が、いくつもの起死回生を生んできた。そうした挑戦や異業種とのコラボが、自分たちを想定外の場所へ連れていってくれると信じている。
「TENTさんと組んで良かったことは、デザインの良さはもちろんですが、作って終わりではなく売るところまで一緒にやれるところ。また、納得できるものになるまでとことん一緒に悩んでやりきってくれるところ。今思うと、“誰と組むか”というのは本当に大事だと思います」
小さな町工場から世界に挑戦する
今や、八尾を代表する町工場となった藤田金属。現状維持でも十分に思えるが、藤田さんは「今後は海外進出に力を入れていきたい」と抱負を語る。700度以上で火入れを行うハードテンパー加工や、熱伝導と保温性にこだわった板厚1.6mmの黒皮鋼板など、藤田金属の製造技術と職人技を駆使してつくられたフライパン ジュウは、確実に世界に通用するレベルだと藤田さん。現に、デザイン賞を取った2021年以降は北米やヨーロッパからの注文が急増しているそうだ。
「これまでは海外の展示会に行っても現地のフライパンメーカーと戦えるものがないと思っていました。しかし、ここ数年で僕をはじめ、工場で働く職人の意識も変わってきています。これまで培った経験と実績、そして商品そのものに対する自信があるので、あとは挑戦するのみですね」
今の藤田金属があるのは、危機に瀕したときに守りに徹するのではなく、勝負に出て挑戦し続けたからだろう。そして、その復活劇はまだまだ終わらない。
従業員19名の小さな町工場が、世界とどこまで戦えるか。
倒産寸前の会社をここまで導いてきた藤田さんの挑戦はこれからも続く。