商品に合った販路の開拓とブランディング
ギフトショーには、タンブラーと急須と鉄フライパンの3商品で挑んだ。「これまでは決まった得意先を周るルート営業がメインだったので、ギフトショーでどんな反応が貰えるのかは未知数でした。華やかな商品が並ぶ中で、地味なタンブラーや鉄フライパンがどれだけ勝負できるのか、一種の賭けのような挑戦だったんです」
しかし蓋を開けてみると、3×3m程度の小さなスペースにたくさんの客が立ち寄ってくれた。
「ギフトカタログを扱う数社からお声掛けいただき、鉄フライパンの新規取引がその場で複数決まりました。自分では買わないが貰えると嬉しい、一度は使ってみたいという鉄フライパンのイメージがギフトにちょうどハマったようです。それからどんどん注文が入るようになり、カタログの契約も増え、売上げもかなり伸びました」
藤田さんはこのことをきっかけに、商品に適した販路を見つけることの重要性を痛感したという。
「いつ契約を切られるか分からず、一方的に価格競争に巻き込まれる量販店に商品を100個置いてもらうよりも、うちの商品の良さを本当に分かってくれる店に1つ置いてもらおう。そして、そんな店を100店舗見つけることを目指そう。それが、会社のブランディングにも繋がると考えるようになりました」
藤田金属だからこそ作れる商品を追求し、売り方にこだわる。そう決めた藤田さんの次の目標は“商品価値を守ることができる”販売サービスの開発だった。
価格を守るため、オリジナリティにこだわる
「その頃は商品をいろんなECサイトで展開していたのですが、値崩れがひどく、価格の下げ合いのような状況でした」価格競争のループから抜け出すには、オリジナリティを持ったオンリーワンの商品を生み出すことが大事だと考えた藤田さんが悩みに悩んで開発したのが、フライパンのカスタマイズサービス『フライパン物語』だ。
フライパンの素材やサイズ、表面加工、持ち手やカラーなどを選び、自由に組み合わせられるシステムは画期的で、あっという間に評判になった。
こういったサービスは手間やコストがかかり、大きな工場などでは断られることも多い。藤田金属でも最初は職人からの反発があった。
「注文が入るたび、『1つずつ違うものを作っていられるか』と職人には怒られていました(笑)。セミオーダーシステムは本当に大変。ただ、これができるのは加工から仕上げまで一貫生産でやっている藤田金属の強みでもある。そこに需要があると確信していました」
個人からの注文だけでなく、まとまった数の注文を取る必要性を感じた藤田さんは、法人営業にも注力。その結果、テレビショッピングで紹介されたり大手食品メーカーの景品に採用されたりと、徐々に認知が拡大していった。そうして、個人だけではなく法人からも数百単位の注文が相次ぐようになったという。
「どんな注文でもなるべく断らないというのがモットーでした。大変だからと断るのは簡単ですが、そうするともう二度と声が掛からないかもしれない。僕はいつも、とりあえずやってみます!と返事をするようにしています」
そうやって生まれた出会いが次の出会いを呼び、東京のデザイン会社TENTとのコラボ商品『フライパン ジュウ』に繋がっていく。