政治

2023.09.15 17:00

日本生まれ育ちの外国籍の子と親へ「在留特別許可」措置に思うこと

行政上必要となった「線引き」

右派・左派双方の反対派からは、「日本生まれ」という条件が国籍付与において出生地主義を採らない日本にしては不可解である、という指摘がなされている。その指摘は確かに一理あるものの、どのくらいの幼少期からどの程度の長期にわたって日本で過ごしてきたかを判断する上で、行政上必要となった「線引き」と推察できる。また、特に日本生まれの非正規滞在者の中には、(少なくとも)法律上は「無国籍」であるため、行政手続き上送還できない子どももいよう。

リベラル派・左派の反対派からは、「そのような線引きをすることこそ非人道的」であり、「日本にいる非正規滞在中の未成年者とその親には全員在留を許可すべし」という要求がある。しかし、例えば日本で生まれた生後数カ月の乳幼児を抱える親に「その子どもが本国に馴染めないから」と言う理由で在特を認めるのはロジックとして厳しいし、逆に本国で中学校まで通い、16歳、17歳で来日し日本にて1、2年暮らす子どもについても、同じことが言える。

在特問題で「子どもの最善の利益」といった場合によく、「送還された場合に本国での公用語を習得できるか」という要素が議論される。(個人差はあるものの)一般的に「10歳前後になるまでに習得した言語は母語になり得る」と言われていると理解するが、この点は言語学者の専門的見解に委ねたい。

「日本生まれでない未成年はどうなるのか」

さらに、リベラル派・左派から指摘のある「日本生まれでない未成年者がどうなるのか」については、「在特ガイドライン」に従って(親を起点とする)個別衡量判断が行われるはずで、すでに触れた通り「積極要素」を積み重ねていけば親子セットでの在特も不可能ではない。また、日本生まれですでに18歳に達した者については、親とは切り離し本人だけについて、従来の「在特ガイドライン」に従って判断が下されるものと推察する。

最も懸念されるのが、同じ親の扶養を受ける複数の子ども達の中で今回の特例措置に該当する者としない者が出て来る一家であるが、上記を積み重ねていくことで一家離散は免れるはずである。

「全員強制送還」「不法外国人の増加」が的外れな理由

一方、保守派・右派からの反対陣営からは、「不法滞在者は、子どもでも親でもとにかく全員送還せよ」と言う主張がなされる。「全員強制送還!」と勢いよく訴えるのは簡単だが、強制送還の執行は財政的にも外交的にも(また自傷行為に訴える者もいるため)人身的にもコストが極めて高い営みである。

今回対象となる家族は、現時点で最低でも6年以上も非正規の状態で就労許可もなく社会保障も無く日本社会でなんとか自活して生き延びてきた強者達であり、日本国内にかなり強力な「共助」ネットワークをすでに持っていることが推察される。

むしろそのネットワークを生かして就労の上、日本市民の正式な一員としてしっかり納税して保険にも入ってもらったほうが、日本社会にとってはある意味で「得」という功利主義的な考え方もありえよう。(なお、非正規滞在者、つまり退去強制対象者の9割方は、例年自費で、ある意味「自発的」に出国している事実をここで想起したい。)
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文=橋本直子

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