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2023.09.16 10:00

米既婚女性、8割が夫の姓選ぶ ただし独身女性は別姓希望が多数

1970年代は、フェミニスト運動が勢いを増していた時代でもあった。「Ms.(ミズ)」が未婚・既婚を問わず女性に使える敬称として一般的になり、結婚後に改姓しないことが男女平等の象徴となった。

ニューヨーク・タイムズの分析によると、1970年代に結婚した女性の約17%が改姓しなかった。保守的だった1980年代にその割合はわずかに減少したが、それ以降、出生時の姓を名乗り続けることを選ぶ女性の数は10年単位で少しずつ増加している。2010年代に結婚した女性のうち、名字を変えなかったのは22%だった。この流れは、若年の既婚女性ほど名字を変えない傾向があるというピュー・リサーチ・センターの調査結果と一致している。

女性の意思決定の動機はピューの調査項目に含まれていないが、先行研究によれば、女性が改姓しないことを選ぶのは多くの場合、ルーシー・ストーンと同じく、出生時の名字が自分のアイデンティティーと結びついていると感じるからである。また、仕事上の理由で自分の姓を残したいという女性もいる。一方、夫の姓を名乗る女性はその理由として、夫への愛と献身を示すため、家族の一員になるため、慣習にしたがうよう圧力を感じるから、などと答えている。

英ブラッドフォード大学のサイモン・ダンカン教授(家族生活学)は、理由がどうあれ、改姓の伝統は「かなり危険」だとBBCに語った。なぜなら「夫が権威を持つという考えを永続させるものだ。男性が家庭の長であるという慣習を再生産する」と説明している。

男女平等を追求するため、妻が夫の姓を名乗ることを禁じる地域もある。カナダ・ケベック州では1981年以降、結婚した女性が改姓することを州法で禁止している。ギリシャでも1983年に、結婚後も女性は元の姓を保持すると定めた法律が制定された。フランス、ベルギー、オランダも、法律上は結婚後も出生証明書に記載された姓を使用することを義務付けている。対照的に、韓国、マレーシア、スペインなど、法律に規定はないものの伝統的に女性が結婚後も自分の姓を名乗り続ける傾向の強い国もある。

他国では法律や標準的な慣行があるにもかかわらず、米国では結婚後に夫の姓を名乗る慣習が根強く残っている。自らのアイデンティティーを守ることの重要性を認識する女性が増えるにつれ、米国の社会規範もまた進化していくかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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