ピュー・リサーチ・センターの調査によると、異性婚をした女性の79%が夫の名字に改姓していた。14%は結婚前の姓を名乗り続け、5%は自分と夫の姓を並べた複合姓を名乗っていた。この調査では、同性婚をしたカップルの改姓傾向については分析していない。
若い女性、白人女性、大学院卒の女性は、結婚後も改姓しない傾向が高かった。また、民主党支持の女性は共和党支持者と比較して、結婚前の姓を名乗り続ける人が2倍多かった。
今後、改姓しない女性が増える可能性も示された。独身女性に対し、結婚後に改姓するかを尋ねたところ、配偶者の名字を名乗ると答えたのは33%にとどまった。
異性婚をした男性は、ほとんどが自分の姓を名乗り続けていた。妻の姓に改姓した人はわずか5%で、複合姓の人は1%未満だった。
米国の結婚と姓に関する伝統は、英国にルーツがある。イリノイ大学のデボラ・アンソニー教授(法学)によれば、名字を名乗る習慣は1066年のノルマン・コンクエスト(ノルマン征服)と共にイングランドに伝わった。教授は、結婚と姓の歴史に関する論文の中で、名字が親から子へ受け継がれるようになったのは15世紀ごろだと説明している。
当時は、女性が結婚後に出生時の姓を名乗り続けることも、男性が妻の名字に改姓することもあった。「名字は財産の概念と密接に結びついており、財産を有する者が、名字の所有者であり創作者だった。それは男性であることが多かったが、必ずしもそうとは限らなかった。時代が下り、女性の財産所有が厳しく制限されるようになると、こうした多様な姓の慣習はやがて廃れていった」とアンソニーは記している。女性は財産を管理することがなくなり、結婚後は夫の姓を名乗るようになった。
結婚後も自分の姓を名乗り続けた米国人女性第1号は、1855年に結婚したフェミニストのルーシー・ストーンだ。夫に宛てた手紙に、「妻は夫の姓を名乗るべきではないし、夫も妻の姓を名乗るべきではない。私の名前は私のアイデンティティーであり、失ってはならないものだ」と書いている。夫婦別姓は合法だったが、夫の姓で有権者登録をすることを拒んだため、選挙権を得られなかった。
1970年代まで、一部の州では女性の投票やパスポート取得に夫の名字を使用することを州法で定めていた。最後まで既婚女性に夫の姓を名乗るよう義務づけていたのはハワイ州で、この法律は1976年に撤廃された。