2. 愛と憎しみが混ざり合う魅力
他人に翻弄されたり、混沌とした人間関係に耐えたりすることを楽しむ人はいないが、人は「ワルい男」がしばしばもたらす感情的な混沌に無意識のうちに引き寄せられる。不良男は、人に対して良い扱いと悪い扱いを繰り返す傾向があり、これは相手にストレスと同時に快感ももたらす。このような混沌を無意識的に求めてしまう理由は、その人の幼少期の経験や、社会規範、あるいは過去の人間関係に根ざしている可能性がある。
こうした魅力の核心にあるのは、人から一定期間にわたり悪い扱いを受けた後に生じる、愛情の「断続的な強化」だ。言い換えれば、自分のことをまるで透明人間のように扱っていた人から突然、自分が人生で最も重要な人物のように扱われると、その魅力はさらに強まる。この断続的な強化という心理現象により、クモの巣にかかった獲物のように相手への魅力にからめとられていくのだ。
学術誌Journal of Social and Personal Relationshipsで2022年に発表された論文では、断続的な報酬が、虐待の被害者と加害者の間に形成される深い感情的つながりである「外傷的絆(トラウマティック・ボンディング)」を生じさせる可能性が示された。外傷的絆は虐待の反復によって生じるもので、報酬と罰の予測不可能な組み合わせが、複雑かつ強固な感情的絆を生み出す。
こうした理由で、人は不良男との愛と憎しみの関係にとらわれてしまうのだ。ピースがピタリとはまることは決してなかもしれないことがわかっていながらも、複雑なパズルを解こうとせずにはいられないのだ。
3. 「愛の爆撃」
不良男が人を操る上で使うもう1つの戦術が「愛の爆撃(love bombing)」だ。これは、表面的には相手を守り、懸命に気遣う優しいパートナーとして振る舞うものの、その裏には攻撃的で支配的、無謀で独占欲に満ちた動機がある行動だ。相手があなたを追いかけているように見えるかもしれないが、それはすべて、あなたに疑念を起こさせないために周到に仕組まれたものかもしれない。不良男は、巧みにあなたを操り、自分が説明なく音信不通となったことや、あなたのニーズやルールをあからさまに無視したことを見過ごすように仕向ける。
こうした人は、相手を説得する上で「相性」を持ち出すことが多い。「僕たちの関係は特別。相性がぴったりなのは否定できないだろ」などと言って、フォーカスをさりげなくあなたに向ける。こうしたやり取りにより、あなたは全体像に目を向けられなくなり「自分は相手から求められている」と信じ込むという悪循環から抜け出せなくなる。
「愛の爆撃」が反復されると、破局と復縁を繰り返すような関係になり、抜け出すことが難しくなる。
まとめ
不良男に抗いがたい魅力を感じる背景には、複雑に絡み合う心理的要因がある。だが忘れてはいけないのは、こうした人は魅力的かもしれないが、健全な関係の根幹にあるものは尊敬と思いやりであり、相手を操ることではないということだ。これを理解すれば、より賢明な選択をするための力となるだろう。(forbes.com 原文)