保守派に「柔軟な思考力がない」理由、新たな研究結果が示唆

独ハノーバーでデモを行うキリスト教保守派(geogif / Shutterstock.com)

社会問題に関する考えの硬さと、認知的柔軟性の間にある興味深い関係に光を当てる新たな研究結果が、Psychological Research誌に発表された。研究チームは、保守主義や排外主義(ゼノフォビア)、根拠のない主張をするといった特徴が、問題解決における認知的硬直性を予測できるかを調べた。

論文の筆頭著者で、イタリア・ローマのジョン・カボット大学(JCU)心理・社会科学部教授、米テキサス大学オースティン校精神医学・行動科学部准教授のカローラ・サルビは「問題解決能力の高い人は、社会問題を理性的に解決しなければならないときにもオープンマインドな姿勢を持つ」と説明する。

「人の柔軟な思考は、さまざまな場面に反映される。例えば、数学の問題を解くときや、社会問題について推論するときなど。人間の思考におけるこの2つの側面に、関連性はあるのか? この研究では、柔軟な思考をする人とはどのような人なのかを調査した」

この関連性を調べるために、研究チームはイタリアと米国からさまざまなプラットフォームを通じて募集した525人の参加者を対象に、オンライン調査を行った。参加者の平均年齢は38歳で、女性が378人、男性が145人、性別を答えなかった人が2人だった。

調査では、参加者に問題解決のタスクを与えることで認知的硬直性を測定。さらに、保守主義、絶対主義、排外主義の要素を組み合わせた「社会認知的偏向(Socio-Cognitive Polarization:SCP)」因子によって、社会問題に関する考えの硬さを測定した。また、科学的に検証された他の尺度を用いて、事実ではない大げさな情報を信じる傾向を指す「でたらめ受容性」と、根拠なく自分の主張を突き通そうとする「過剰主張」についても調べた。

その結果、次のことが明らかになった。

1. 社会認知的偏向(SCP)と過剰主張が低い人は、問題解決の測定で最も良い結果を出した。これは、社会問題に対する考えが硬い人ほど認知的硬直性も高くなりやすいことを示している。

2. 過剰主張は、自己高揚(自尊心を高める情報を集める傾向)と関連しており、認知的硬直性を助長する可能性がある。極端な政治的イデオロギーはしばしば過剰主張と関連している。そうした考えを持つ人は、十分な知識を持たないまま自信を持って自分の信念を主張する。

認知的硬直性に関連するでたらめ受容性や過剰主張の影響を減らす手段として、研究チームは、問題解決能力を高め、よりオープンマインドなアプローチを取るよう心掛けることを勧めている。問題解決には、物事をさまざまな角度から見たり、最初の表象を超えたりする能力が必要だ。この認知的柔軟性は、社会問題に関する考えにも応用できる。

この研究では、参加者に対し、正方形の中にある9つの点を直線4本の一筆書きで結ぶ「9つの点の問題」と呼ばれるパズルを与え、どのような人々が文字通り「枠にとらわれない」思考能力を示すかを検証した。結果、一部の人は、9つの点を正方形として認識し続け、現状にとらわれたままで問題を解けなかった。

これとは反対に、認知的柔軟性が高い人は、正方形の形にとらわれずに解決策を見出せる。枠を超えて考えるというこの貴重なスキルは社会問題を考える際にも応用でき、諸問題に新鮮な視点からアプローチできるようになる。

サルビ教授は「判断する前に一旦立ち止まり、当初の考え方を崩さないと解けないなぞなぞのように社会問題にアプローチすること」が重要だと強調している。

forbes.com 原文

翻訳=Akihito Mizukoshi・編集=遠藤宗生

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