岸本:私はPizzaDAOの話を聞いていて、「ホール・アース・カタログ」を作ったスチュワート・ブランドを思い出しました。彼は地球の写真を民間に開放するというムーブメントを起こし、実際にNASAから地球の写真を入手して、カタログに掲載しました。
当時、一般の人は宇宙から撮影した地球の写真を見たことがなかったんですよね。その写真は、初期のiPhoneの壁紙にもなりました。大きなムーブメントを起こす人は地球を意識するのかな、とSnaxさんの存在を知って思いました。Twitter創業者のジャック・ドーシーも、「Twitterは地球の鼓動(Pulse of the Planet)になるんだ」と言っていました。世界を変えたいという欲求があると、地球全体に働きかける力が働くのかもしれませんね。ピザがユニバーサル・ランゲージだという視点が、まさにです。
PizzaDAOは「DAOの桃源郷」
山本:お話を聞いてて私が思い出したのは、ソーシャル物理学です。マサチューセッツ工科大学(MIT) ヒューマンダイナミクス研究グループ所長のアレックス・ペントランド教授が研究されているもので、その中の一つの事例がPizzaDAOに似ているなと。具体的には2009年、アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)が企画したソーシャルネットワーク・コンペティション「レッドバルーン・チャレンジ」に、MITのチームが出場した時の取り組みです。全米に配置された10個の赤い風船を見つける速さを競うという大会には、4万ドルの賞金が設定されました。同チームは発見者だけでなく、発見に貢献した一人ひとりが少額を受け取れる仕組みを作り、ソーシャルネットワーク・インセンティブを働かせました。結果、チームは世界規模の組織をいち早くつくり出し、目標を達成。優勝を飾りました。
その仕組みが、非常にDAOっぽいですよね。PizzaDAOにおける、ピザを分け合うことがパーティーへの参加意欲を高め(インセンティブ)、知識交換に寄与する仕組みにも、ソーシャル物理学の力学が働いているように感じました。
西村:まさに!私は昨年から日本のPizzaDAOには関わらせていただいているのですが、そこで会った仲間と仕事が始まっています。
矢野:私は、仕事をする上でみんなで大義を共有しやすいように、錦の御旗をつねに探しているのですが「ピザは無料であるべきだ」というのは圧倒的な説得力ですね。本来、DAOは共感を持って進めていくべきもので、純粋な方々の桃源郷であるべきです。だけど結局、資本主義の視点が勝ってしまい、桃源郷とは程遠い投機的な動きが多く見受けられます。その点PizzaDAOは、純粋なDAOのあるべき姿を表しているように見えます。
西村:私もWeb2.0脳が拭いきれないので、たまにSnaxと話をしてても頭がバグっちゃいます。そんなピュアな思いだけで大丈夫?と。でも結果として大丈夫なので、純粋さがロジックに優っているんでしょうね。
高荷:脳がバグることが、かえって魅力的なのかもしれないですね。その魅力に引き寄せられるように、人々が参加してきている。
山本:なんだか私たちもすでに、PizzaDAOメンバーになっちゃってますね笑