経営・戦略

2023.09.09 10:00

ピザは無料であるべき!「宇宙船地球号」PizzaDAOが目指す優しい未来

谷本 有香
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PizzaDAOは、既存の価値観へのカウンターも示している。宣伝・誇張というものに対し、SnaxはNOを突きつける。PizzzaDAOの始まりは、音声ソーシャルメディアClubhouseの「The Room About Nothing(何もない部屋)」だ。2021年当初、Clubhouseの多くの部屋は、プロパガンダや拡大思想のビジネルモデル、自分のことを宣伝したがる人たちで溢れていた。Snaxはそのような会話に退屈し、「The Room About Nothing」という部屋を作ったという。そこは、ランチに食べたものを共有するなど、たわいもない会話が繰り広げられる場所だった。しかし、この台本のない人との繋がりこそ居心地が良いと評判になり、その発展系が現在のPizzaDAOとなった。

PizzaDAO、Snaxの動きを見ていると、コミュニティマネージャーの究極系が、Snaxなのではないかと感じてくる。このあとSnaxへの取材内容を紹介するが、どの言葉も、どの姿勢も非常に純粋である。この純粋さが人々を惹きつけ、世界的なムーブメントを生み出していることを感じてもらえるだろう。TEDでアントレプレナーのデレク・シヴァーズが行った有名なプレゼンテーション、「社会運動はどう起こすか」に出てくる最初のダンサーが、まさにSnaxなのではないだろうか。

「21世紀版マクドナルド」を作りたい

なぜSnaxはPizzaDAOを立ち上げたのか、その背景と彼のキャリアについて聞いた。

「僕は2021年1月から、PizzaDAOのコミュニティ・オーガナイザーを務めている。2011年から暗号通貨やブロックチェーンに目を向けてきたけれど、それより前からインターネットを活用したコミュニティ活動に関わっていた。インターネットの普及で全世界とシェアが可能になった一方で、僕は地元のコミュニティとの繋がりを大事に思い、『South Silly』という地元フィラデルフィア南部の情報共有グループを運営しているんだ。

現在では1万3000人以上が参加し、ハロウィーンやプロムのイベントを開催したり、地域の愉快な出来事の写真をシェアしたり。例えば最近は、道路に落ちていたスイカの写真をシェアしたりして。消火栓から、火が出ているようにスイカが落ちているのが可笑しいでしょう笑?

この『South Silly』は掲示板のような存在で、地元の人々の興味やニーズがわかるのが面白いんだ。グループ名の通り、メンバーは愉快な投稿やイベントを企画してくれるので、活動はいつも楽しいものになっているよ。最近では、スーパーマーケットの中でダンスパーティーを企画したりと、日常の中の特別な瞬間を共有して、コミュニティのメンバーに喜んでもらっている。人々がつながり、楽しんでいる姿を見ると、自分の心が温まり、嬉しくなるんだ」(Snax)

人々をつなげることが、結果としてビジネスにもつながっているという。昨今では、コミュニティマネジメントをビジネスのキーととらえる事業者も増えてきているが、最初からビジネスの目標だけを追うのではなく、純粋に人々が楽しめる環境、安心できる環境を作ることが、コミュニティとしては大事だ。

2010年5月22日、ピザ2枚を1万ビットコイン(BTC)(現在の価格でいうと約380億円)で購入した、初期のビットコインマイナーでプログラマーだったラズロ・ハニエツの行為を祝う日として、PizzaDAOが広めているグローバル・ピザパーティー。すでに世界中に広がりを見せているが、Snaxが今後、目指すところはどこなのか。
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