ビジネス

2023.09.07

好奇心と直感に従って起業 「生理ライフを快適にしたい」

高堰うらら 写真=帆足宗洋(AVGVST) 

「生理が自己責任とされる社会」という課題に対し、生理ライフを快適にすることで挑むのがオモテテCEOの高堰うららだ。「未来のあたりまえを実装する」ための取り組みとは。


2021年創業のオモテテは、生理のケアのために必要な商品・サービスのアクセシビリティを向上するための事業を展開。そのひとつが、トイレの個室で生理用品を取得可能にする「unfre.」だ。

同社CEOの高堰うららは、東京大学大学院工学系研究科で都市工学を専攻。スマートシティやモビリティの研究をするなかで、物理的な移動手段自体ではなく、精神的・社会的自由の観点から女性などのモビリティ向上に関心をもった。女性活躍推進が叫ばれる一方で、既存研究が少ないことを問題意識としてもつと同時に、自身も生理で悩むようになり、ヒアリングを重ねた。

「外出時に突然生理になると、まずトイレに駆け込んでトイレットペーパーで応急処置をしてから、コンビニなどに生理用品を買いに行って再びトイレへ、という行動を取る人が多い。そもそも、駆け込んだトイレで必要なものが得られたら便利だし、お金を払ってでもクローズドな場所で生理用品を買いたいというニーズはある。ここに事業としてのチャンスがあるのではと考えました」

高堰が都市計画に興味をもったのは高校時代から。環境、行政、農業、不動産など、さまざまな分野に興味があった高堰にとって、都市計画は自分の探究心をうまくいかせる学問だった。

「ゆくゆくは都市計画系の教授として自治体でアドバイザーをし、自分の会社でスマートシティにかかわるなど、アカデミアと事業を両立したいと思っていた。オモテテの起業は計画が早まった感はありますが、好奇心や直感に従った結果でした」

unfre.のビジネスモデルは主にふたつ。ひとつは、生理用品の入ったボックス型装置を導入する商業施設や鉄道会社などから運用費を得ること。もうひとつはエンドユーザーからの収益だ。ユーザーはアプリで利用可能な施設を検索し、個室内でアプリを操作すると一定数は無料で生理用品を取得できる。無料枠以上の利用や月経管理などほかの機能が使える有料会員の枠を設ける。

unfre.は24年の本格リリースに向け、JR東日本グループや丸井グループなどと実証実験やユーザー調査を重ねている。オモテテが挑むのは、既存の生理用品のリプレイスではない。「アクセスや持ち歩き管理が自己責任・自己管理になっていることが課題であり、新しい社会インフラをつくるために、事業をスケールさせていきたい」

高堰は、オモテテ以外にも一般社団法人アンカーやNPO法人Your Schoolの創業や運営に携わるなど、教育に関する社会課題解決にも積極的に取り組んでいる。「いま私は25歳で、オモテテ創業7年目でもまだ30歳。いまここでしか得られない経験に集中しつつ、本質的な課題の解決など、自分のやりたいことを追求し続けたいですね」


たかせき・うらら◎1997年生まれ、東京都出身。東大大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程に在籍・休学中。2021年にオモテテを創業。一般社団法人アンカー共同代表理事、NPO法人Your School副理事長。「One Young World」ジャパンアドバイザーも務める。

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文=堤美佳子 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング =千葉 良(AVGVST)ヘアメイク=KUNIO Kataoka(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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