謎解きは思考の入り口 松丸亮吾が描く「考えることを楽しむ」社会

松丸亮吾 写真=帆足宗洋(AVGVST)

クイズと謎解きの違いは、知識の「量」を問うのか、その「使い方」を問うのかにある。子どものころ、知識量では兄たちに及ばなかったが、謎解きは家族の誰よりも早く答えられた。これが、今、謎解きシーンを牽引する松丸亮吾の原体験だ。

以来、考えることが好きになり、勉強も楽しくなり、大学は東京大学に進学。同大学の謎解き制作集団「AnotherVision」の2代目代表となり、毎月イベントを開催していると、「東大の謎解きサークルが盛り上がっている」と注目されるようになった。

テレビに出るようになったのは、フジテレビの番組「今夜はナゾトレ」のシミュレーションを依頼されたのがきっかけだった。

「その際に担当者と交換した名刺に、謎解きをつけていたんです。そしたら、『こんな面白いものをつくれるなら番組でコーナーにしよう』と。そのときに、好きなことを極めるほど、それが尖っているほど、先が拓けていく、繋がっていくんだなと実感しました」

松丸曰く、「当時の謎解きはブルーオーシャン」。クイズとの違いもあまり認識されておらず、それを得意としてテレビに出ている人も少ないなか、出題者としてレギュラー出演するようになった。

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幼少期に「好き」や「楽しい」と思えるものに出会えたとして、それを突き詰め、発展させていける人は多くない。松丸は、「それは周囲との比較が原因」だと考えたうえで、自身は、「無難なことよりも好きなことを突き詰める時間のほうが、お金よりも何倍も価値がある。やりたいことができる=自己実現できている」という軸で道を選択してきた。

2019年に、RIDDLER(リドラ)を起業。現在は、謎解きクリエイターとしての活動、芸能活動、社長業を並行している。やりたいことだと、無理が利く。加えて「何かを諦めるのは、機会損失をするようで苦手」という性格もあり、多忙のままに走ってきた。

転機となったのは、数カ月休みがない日々が続き、仕事を絞る決意をしたこと。「あふれ出るぐらいに案件を手掛けてきたことで、AがあったからBに繋がった、など仕事の流れが見えてきました。でも、このまますべては受けられない。子どもの頃からずっと好きなポケモンの案件だけは全部やると決めました」。その数カ月後、ポケモン番組のMCの話が舞い込んできたとき、決断が間違っていなかったと確信した。
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