こうした「飛び地」にオフィスを置くのは日本だけではなく、アメリカも同様だ。飛び地のサテライトオフィス(以下、飛び地オフィス)でのオフサイトミーティングを企画・運営するSaaS「Retreat」(創業者は山田 俊輔氏)が成長。Uberに初期投資をするなど、これまで7社のユニコーン企業に投資したジェイソン・カラカニス氏や、米国トップクラスのVC、アンドリーセン・ホロウィッツが出資するなど、注目度の高さがうかがえる。
はたして、自然の中にある飛び地オフィスで仕事は捗るのか。
離島からメトロバーブまで 国内外の飛び地オフィス
まず国内外には実際、どんな飛び地オフィスが存在するのか、いくつかの事例を見ていこう。「森の書斎」で生産性は向上するのか
「森の書斎」と称して、2023年7月、軽井沢にリゾートオフィスをオープンさせたのはIT企業アステリアだ。カルチュア・コンビニエンス・クラブが新たに開発した複合施設「Karuizawa Commongrounds」の一角に位置し、自然を感じながら仕事に集中できるオフィスに、視界230度の「ハーフムーンシアター」などの最新映像機材を整備。パートナー企業や地域の情報発信拠点としても、運用されている。
離島の大自然を感じて、働き・遊び・混ざり合う
「島ぜんたいがワークスペース」を標榜し、2023年6月、島根県隠岐諸島の西ノ島で、企業や個人を対象に営業を開始したワーケーション・サービスがある。就職などのマッチングDX事業を展開するポートの子会社、オルタナティブ・ポートが運営する「Oki Work」だ。同サービスでは、旅費と宿泊費、テレワークオフィスの使用料金を含めた中長期滞在型のパッケージを提供。利用者は島の自然を体いっぱいに感じながら、働き、遊び、島民と交流できるという。
青い空と海を臨むオフィスで、東京を超える実績を出す
営業の新規開拓件数で東京オフィスを上回る実績を見せたのが、セールスフォース・ジャパンが2015年10月、和歌山県に開設した白浜オフィスだ。青い空と海が眼前に広がるオフィスには、電話やメール、チャットなどを用いて顧客にアプローチする内勤営業の社員の一部が勤務。社員は都会の喧騒や通勤ラッシュなど、ストレスが少ない環境で働くことによって、生産性が高まった。地元の小中学校でプログラミングを教えるなど、社員は地域の活動にも積極的に参加。国内における飛び地オフィスの代表例として知られている。
組織のカルチャーに浸る、東京ドーム6.5個分の広大な施設
カリフォルニア州中部のスコッツ・バレーにある75エーカー(東京ドーム6.5個分)の広大な敷地に建てられたリトリート施設「1440 Multiversity」。宿泊施設やメディテーションセンター、トレイル、焚き火場などがあり、企業や個人を対象にリーダーシップからアートまで、多彩なイベントを開催している。中でも米セールスフォースは過去、コロナ禍を経てリモートワークが進むなか、同社が「トレイルブレイザー・ランチ」と呼ぶ、社員がコミュニケーションやコラボレーションをするために集まる場所として活用。同社の文化を共有し、強化することに役立てていた。