これは戦いの進め方として賢明だ。というのも、ウクライナ軍が6月上旬に広い範囲で反転攻勢を始めて以降、こうした戦術はいくつかの重要な戦闘で功を奏してきたからだ。
ロボティネでの1カ月にわたる戦いは、ウクライナ軍の反攻の転換点になった。ウクライナ軍の旅団はロシア軍が設けた地雷原や塹壕をじわじわ進んでいき、第58諸兵科連合軍などの敵部隊を徐々に損耗させていった。ウクライナ軍は自軍の車両を1両撃破されるにつき、ロシア軍の車両を1両撃破した。
攻撃側と防御側の重装備の損失比率が1対1というのは、通例に反する数字である。伝統的に、攻撃する側の軍隊が勝利するには防御する側の軍隊の3倍の兵力が必要とされ、勝った場合も防御側の3倍の損害を被ると想定されてきたからだ。
ウクライナ軍が攻撃する側であるにもかかわらず、損失が同等なのは、砲撃戦でウクライナ側がさらに優勢になっていることから説明できる。西側製の榴弾砲やロケットランチャーを多数装備するウクライナ軍の砲兵部隊は、クラスター弾や誘導弾も使うようになっている。特筆すべきは、ウクライナ軍の砲兵は自軍の榴弾砲やロケットランチャーを1門撃破されるごとに、ロシア軍のこれらの兵器を3〜4門撃破していることだ。
8月23日、ぼろぼろになったロシア軍の連隊がロボティネから敗走し、ウクライナ陸軍の第47機械化旅団が廃墟にウクライナ国旗を掲げたとき、次に何が起こるかは自明だった。ロボティネの高台からは、次の目標であるノボプロコピウカが目と鼻の先に望めただろうから。
とはいえ、ノボプロコピウカへの部隊の進め方は、ロシアがウクライナに対する戦争を拡大してから1年7カ月経つなか、ウクライナ軍が戦場で経験を積んできていることを物語っている。ウクライナ空挺軍の第46空中機動旅団と第82空中強襲旅団は、そのまま南に進軍するのではなく、東へ方向転換した。これはウクライナ海兵隊のやり方に倣ったものとみられる。海兵隊の旅団は、ロボティネから東へ100キロメートルほどにある集落ウロジャイネを解放するにあたって、やはり側面から攻撃し、ロシア軍の守備隊の補給を断っていた。