「法的な課題を解決する必要はありますが、将来的には、トークンを発行して、未来のチケットを買う感覚で出資していただくとか、株式投資のような仕組みもできると面白いですね。その点に関しては専門家の方にもご相談しています。もしその作品が“カメ止め”のようなヒット作になれば、売却して大きく儲けることもできるかもしれません」
もちろん、お金を集めるだけでなく“出口”のことも考えている。特に海外へのセールスには力を入れていて、気になった映画制作者がいれば、SNSのDMで話しかけることもある。
「今は海外の方に作品を観ていただいたり、お話できたりする機会は国際映画祭がほとんどです。なので、もう少しフランクな出会い方も含めて、いろんな映画人との交流をもてたらと思っています」
雨無はこうした資金面の改革に加えて、長時間労働の常習化や女性の働きにくさが課題となっている労働環境の改善にも取り組み、業界全体の底上げに挑んでいる。
100年以上愛される映画をつくる
夢は、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを獲るようなすべての観点でのクオリティが高い作品をつくること。そして、100年以上愛される映画をつくること。そのために今、海外展開を視野に入れた「ホラー・スリラー」ジャンルの映画企画を進めている。
「SNSでプロジェクトメンバーを募集したところ、100人以上の応募がありました。ホラーの知見がある方々もいるのですが、違ったジャンルだけれども企画力のある作家の方や、お笑い芸人さんなんかも参加してくださる予定です。そういった多様な才能とテクノロジーをかけあわせて、世界に向けた作品をつくれたらと思っています」
自身が手掛けた作品で世界中の人々と“感情をシェア”できる日は、そう遠くないかもしれない。
あまなし・まゆこ◎1994年東京都生まれ。2020年にスタジオねこを立ち上げ、同年、本広克行監督映画「ビューティフルドリーマー」が公開、多くの映画・ドラマ作品を手がける。近年の作品としてNetflix「トークサバイバー」TXドラマ「量産型リコ」、映画「ジャパニーズスタイル」など。