映画祭では、上映作品の監督や関係者と関わる機会が多くあった。そこで知り合った俳優の斎藤工や松永大司監督などが、雨無の仕事ぶりを見て「プロデューサーが向いているんじゃないか」とアドバイスをしてくれた。
「周りの皆さんに自分がやりたいことや得意なことに気付いてもらい、今のお仕事に導いていただいた形です。若くしてこの仕事に就けたのは、そうした周りの力も大きかったと思います」
雨無は、映画プロデューサーの魅力を「最初から最後まで、作品に関わることができること」と話す。プロデューサーは、一番はじめに設計図を描く仕事。監督と違って、資金集めや宣伝までを含めて全体像を見据えることができる。
「映画のチームを考えるときも楽しいですね。RPGみたいで。ゲームに例えると、良い戦士と良い魔導師と……といった感じで、すばらしい才能をいかに組み合わせるかを考え、戦略を練っていきます」
「コンテンツの新しいつくり方」をつくる
新卒で入社した映像制作会社LDSでの3年間を経て、2020年に独立。「コンテンツの新しいつくり方をつくる会社」を掲げ、スタジオねこを設立した。その動機について「作品とともに死ぬ覚悟を持ち、ヒリヒリしたかったんです」と語る。その言葉通り、雨無が一つひとつの作品にかける熱量は大きい。映画プロデューサーは、同時にいくつもの案件を担当し、現場は他のスタッフにバトンタッチするケースも多いが、雨無の場合は、基本的に最初から最後までその作品に集中する。だからこそ、スタジオねこはマネタイズ、制作、宣伝などを自由にカスタマイズできるという強みがあり、たくさんの相談が舞い込んでいる。
近年は映画鑑賞料金の値上げや映画館の閉館など、映画業界のナーバスな話題も目立つ。そんな中で雨無は、今の時代に合った新しい映画製作を模索している。
「映画をつくる際には、資金を集めるフェーズと、作品を公開してお金を回収するフェーズがあります。それぞれ改善すべき問題点があるんですが、特に資金調達についてはもっといろんな可能性があると思っています」