SMALL GIANTS

2023.08.31 17:00

八尾発・企業が関わりたくなる「まちへの投資」という文脈づくり 

大学生が工場見学をする様子 彼らの目には、ものづくりが新鮮に映る

この地域には誇れるものも何もないというのは嘘で、何らかの要因で地域を見ようとしていない、知ろうともしていないことが大半の原因です。筆者である私も自身のnoteで語っていますが、漠然とした理由でどこかのまちと比較して「自分のまちがキライ」でした。
 
そこで「まちは楽しい」「面白い人がいる」「誇れるものがある」ということに少しずつ気づいてもらう活動を始めました。その活動はシンプルに、まちの人や情報を紹介していくことです。ただ紹介するというよりは、これまでのヒアリングや相手の求めに応じて人や場をマッチングしていく、いわば御用聞きのようなことを続けました。
 
役所の人という関係性から、気づけば頼ってもらい「まちのことを聞けば教えてくれる人」という立場が確立されるようにまでなり、また私からもまちづくりで迷うことがあれば、政策について企業の方々に頼るような関係性を徐々に構築していきました。
 
そうすることで、少しずつまちに対する感情が芽生え、このメンバーだったら一緒に面白い仕事ができるのでは、もっとまちを良くしていけるのではと考え、その範囲を広げていくことに注力しました。
 
みせるばやおでの毎月1回の定例会の様子 ここからさまざまな化学反応が生まれている

みせるばやおでの毎月1回の定例会の様子 ここからさまざまな化学反応が生まれている


さらに「みせるばやお」を設立するという大きなミッションを行政や企業も一緒になって取り組んでいく中で、地域でのストーリーを編んでいきました。その結果、いまみせるばやおは自主的な活動ができており、ありがたいことに役員や理事のメンバーの中には、みせるばやおの世界観や価値観を自ら伝えていく方もいらっしゃいます。

地域に対して、新たな文脈を「編む」

こうして企業にとって、地域で企業活動をすることに関して文脈が生まれ、企業の地域での存在価値のひとつである社会貢献や地域貢献の意義なども生まれます。
 
ちなみに文脈や内容を英語ではcontextといいますが、ラテン語の語源としては、con(ともに)、text(編む)を意味します。地域で考えると、地域に愛着を持つためにも、地域を認知するためにも、地域の人と人の関係性を丁寧に編み込むことでうまれる文脈を持つこと=その地域で活動する価値となることがわかります。
 
地域の中小企業にとって、地域貢献する手段といえば、地域清掃や地元の祭りに協賛することなどが挙げられます。しかし、そういった手段だけでは地域と企業の関係性にある種、文脈は生まれず、協賛に至っては毎年しているという事実が残るだけです。
 
みせるばやおの事例では、地域貢献の新たな文脈として、みせるばやおの活動に参画すること、ひいては自分たちのものづくりの魅力を発信することが、地域貢献になるという文脈を用意しました。
 
つまり、工場数も減り続けて失われつつある「ものづくり」というまちのアイデンティティを後世にも受け継いでいくために、地域のものづくりの魅力を発信し、興味を持ってもらうことこそが地域貢献につながるということです。
 
さらには、地域の仕事が内外に発信されることで地域の認知度が向上すれば、結果、その地域に所在する企業も誇りに思うという好循環になる。今ではその認知度向上のおかげで、ある会社では溶接工を募集すると、300人ほど応募が殺到するまでに。採用難といわれがちな中小企業の活気にもつながっています。
 
皆さんも自分の地域を知ることからはじめ、まちづくりに参画してみませんか。

文=松尾泰貴

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