私の市役所勤務時代には、1日に2件の視察を受け入れるのも当たり前、年間多い時で60件ほどの視察や意見交換を受け入れたこともありました。
地域としても「新しい産業を起こした」「産業全体が盛り上がり、大成功を収めた」という訳ではない「まち」がどうして注目を浴びるに至ったのか。これまで来てくれた他地域のひとからの気づきや講演をする中で得たフィードバックを元に、冷静に分析したいと思います。
地域の企業がはじめた、小さな「まちへの投資」
はじめに、産学官金が連携するコンソーシアム「みせるばやお」やオープンファクトリーのイベント「FactorISM」といった活動は、私が行政にいて主導していたせいか、「行政が主体となっているもの、お金を出しているもの」と思われがちです。もちろん補助的な事業の予算や八尾市も主体的になって活動している部分もあります。ですが、これだとまちが財政難に陥ったり、担当者が変わったりすれば制度破綻をおこすのではないか。そこで設立当初から考えたのが、持続可能なまちづくり。
平たく言えば、地域企業にまちに投資してもらうことで、みんなでまちをよくしていこうよという考え方です。
地方で大規模な寄付や投資を募っても集まらないという議論はよくあることですが、毎年「小さく、地域企業にまちに投資してもらう」年貢のようなものをみせるばやおは導入しています。
プロジェクトへの参画企業にも、1カ月に1回はまちのこと、未来のこと、地域の子どもたちのことを考えてもらう「寄り合い」があります。さらにボードメンバーと言われるみせるばやおの理事・役員には、月に1回は2時間かけて「みせるばやお」という村寄り合いに参画してもらい、八尾市からの相談事や活動の方向性、みせるばやおで行われるイベントや他団体からのコラボレーションに至るまで、さまざまな意思決定を行っています。
設立当初から、会員同士の交流会やセミナー、ものづくりワークショップの企画などは、参画企業が自ら行い、最近では視察対応に至るまで自ら主体的にやってもらっています。
自分たちの地域の学びや発信などを「自分ごと化」していくことで、自らも楽しんでくれていたり、参画企業の従業員たちが組織の垣根を越えて活動をはじめたりと、あらゆる化学反応が起こるようになりました。