多くのスモール・ジャイアンツたちが抱える悩みを解決すべく、Forbes JAPANは「オンライン師弟相談会」を実施しました。
今回、「スモール・ジャイアンツ アワード2022-2023」でグランプリとなった筑水キャニコム(福岡県うきは市)の包行良光社長が悩みを相談する相手は、スノーピーク(新潟県三条市)の山井太社長です。
農業機械を手がける包行社長は、山井社長に「世界に通用するブランド戦路について聞いてみたい」と語っています。弟分社長の相談事に対して、懇々と語る山井社長ですが、実はブランディングについて包行社長に一本取られたと思うことがあるといいます。そこで出た逆質問のやりとりも必読です。
ブランディングを意識したわけではない
筑水キャニコム・包行社長(以下、包行):キャニコムは1980年代には品質の高さを売りにしたOEMが主流でしたが、1989年にCI(コーポレートアイデンティティ) 導入し、自社ブランドの強化を始めました。2001年の北米進出をきっかけに海外進出するも10年ほどは鳴かず飛ばずの状況でしたが、2022年には海外の売り上げ比率が56%となり、半数以上が世界での販売に切り替わっているのが現状です。
スノーピークといえば、高品質でブランド力が高く、憧れがあります。山井さんがブランディングを意識されたきっかけや、どのようなことを心がけているのかをお伺いできますか。
スノーピーク・山井社長(以下、山井):ブランディングを意識してやっていたわけではないんです。僕自身がスノーピークの最大のファン、ユーザーの代表という立ち位置で、「会社はこうあった方がいいよね」という点を一つ一つ実行していく。これこそが、スノーピークというブランドを形作っていったと思います。
包行:スノーピークのハイブランドとしての意識は、先代から受け継がれたのではなく、山井さんが会社に入ってから身についたものなのでしょうか。
山井:父の代では登山用品を作っていましたが、登山用品は人の生命に関わるので、しっかりとした品質のものを作らなければいけません。そういった点では、父の残してくれた企業文化として、良いものをちゃんと作るという意識はあったと思います。
そして、僕がスノーピークに入ってから新しく立ち上げたのが、キャンプ用品事業でした。新しくおしゃれなキャンプ用品を一個一個こだわりながら作って、さらにシステムデザインなどの全般的な提案をしました。
山井:スノーピークの全ての商品には「永久保証」をつけており、耐久性には自信があります。
父が残してくれた企業文化を大切にし、自分のやりたいことを続けるうちに、スノーピークがブランドになったのだと思います。
包行さんも、お父さまのご所望を引き継いで頑張っていると思います。その点での立ち位置は僕と同じですよね。
包行:私の場合、会長である父がブランディングへのこだわりが人一倍強いんです。父のブランディングというのは「キャニコムはキャニコムとして変わってはならない」という考え方。
一方で、私は海外での売り上げを伸ばしたい、商品を海外でもっと広めたいという思いから、キャニコムを使って、新たにお客さまが使うものを創出していかなければならないと考えていました。
農業機械なら、単に運搬するだけではなくて、その足回りを使って肥料を撒くなど、作業機として新しい価値を加えて、新しいお客さまを創出するような手法こそが、新しいブランディングじゃないかなと考えています。