AIには従来のソフトウェアには存在しない、特有のリスクが存在する。AIは「魔法の道具」ではない。うそをつくし、知ったかぶりもする。差別もすれば、暴言も吐く。悪意のある攻撃で、だまされることもある。しかし、2019年の創業当時、AIのリスクはまだ顕在化しておらず、シリコンバレーには「AIなら、何でもできる」と謳うAIスタートアップが、続々と誕生していた時期であった。
世界的VCセコイアが投資
周囲の盛り上がりをよそに「AIの脆弱性と対策」を一貫して説き続ける大柴たち。その先見性が、一部の実績ある人々を引きつけた。まずはチーム。「AIのリスクに立ち向かう」というロバストでしか追求できないビジョンに、米マイクロソフトのAIリスクの統括担当メンバー、米グーグルにてAIセキュリティを初期に担当したシニアAIエンジニアなど、世界トップクラスのAI人材が集まってきた。この動きは、世界的VCであるセコイア・キャピタルのパートナー、ビル・コーランの目にも留まる。グーグルでエンジニアチームを率いるシニアバイスプレジデントを務めた経験のあるコーラン。10年前のグーグル内でのAIに関するインシデントの多発を知っており、AIの普及によるAIリスクの社会問題化をにらみ、製品もない段階で出資を決めた。
ロバストは現在、企業でのAIガバナンス構築を支援し、リスク管理をするプラットフォームの運用を事業とする。導入先は、アメリカでは国防総省、Expedia等、日本では東京海上ホールディングス、Zホールディングス等。資金はセコイアやタイガーグローバルなど、世界トップVCなどから累計約80億円を調達している。