そう考える大柴らが提唱するのが「攻めのガバナンス」だ。AIを積極的に利用するために、守りに見えるAIリスク管理の体制を第一に整えるという発想である。政府への提言にも力を入れる。日本では、自民党の「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」に参加。AIリスク対策に関するガイドラインをまとめるよう求めた。
AIリスクという巨大な人類の敵に、あらゆる角度から立ち向かう大柴。最後に、そのモチベーションの源泉を問うた。
「グーグルのミッションには“organizethe world’s information ”という一文がありますが、10年前に出てきたサービスは、情報をまとめることに価値がありました。しかし、そこから生まれるテックのひずみを見てきた世代として、ソフトウェアはもっと思想をもつべきだと思うんです。人間の代替として自動で意思決定を行うAIに『フェアな意思決定をさせる』なら、それがどんなものか人間が定義しないといけない。でなけば、勝手にAIが意思決定してしまう状況に来ている。AIリスク対策のプロダクトを開発すれば、AIを介して行われる人間の営みに『こうあるべきだ』と提言ができます。
つまり、プロダクトを通して、『こうすれば、社会は良くなるはずだ』という思想を社会に入れられる。これが、僕のモチベーションの根底にあるかもしれません」
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おおしば・こうじん◎ロバストインテリジェンス共同創業者。開成高校卒業後、渡米。ハーバード大学卒。大学在中に「AIの脆弱性」を研究テーマにAIのトップ会議に複数論文が採択。2019年、当時の指導教授ヤロン・シンガーと同社を共同創業。