文系理系という区別はあまり必要ないんじゃないか
──ティム・クックさんの「地域社会への貢献をアプリ開発によって後押ししている」という賞賛の言葉は、まさにお二人が所属する研究室のビジョンにかなったものなんですね。秋岡:いま私は熊本市の観光地である江津湖が抱えている問題を解決するためのアプリを開発しています。ここではオオクチバスやブルーギルといった外来魚が大量に繁殖していて、関係者の方々が頭を抱えているんです。
もちろんこうした社会問題は複雑な要素がいっぱいあるので、一つのアプリが何かをすぐに解決できるとは思いません。でも、関係者の皆さんにお話を聞きながら「すぐに解決する問題ではない」と気づいた時に、じゃあ未来の世代に向けたアプリを作れないかと思ったんです。
それで子どもたちが「外来種とは何か、どんな問題があるのか」について、ゲーム感覚で楽しく学べるアプリ開発に挑戦しています。
山田:僕は、肢体不自由な人が眼球、視線で動かすことのできるiPad専用のアプリ開発に取り組んでいます。秋岡さんと同じく僕も、子どもの未来を拡げるような課題解決アプリを作っていきたいと思っているからです。そのためには、教育そのものについてや、特別支援教育について自分で調べたり、聞いたりすることが大切だと実感しています。
──課題解決のために調べたり、取材したりしながら、一方でどんなテクノロジーを使えばいいか考える。文系とか理系とか、そんな区別のないことを学んで実践しているんですね。
山田:文系理系という区別はあまり必要ないんじゃないかと僕は思っています。エンジニアリングだけやっている、コーディングだけやっているという人なんて本当はいないんじゃないでしょうか。
誰かの役に立つことをしたいと思っている人は、技術の基礎を知って、それがどう応用できるかを考えていると思います。そのためには、いろんな社会背景や知識を知っておく必要があるわけで、そこに理系や文系の境界はないような気がするんです。
秋岡:海外では文系理系の区別がないと聞いたことがあります。私たちは高校の途中で文系コース、理系コースに分かれる選択をしなければなりませんでしたが、これからはそういう壁もなくなっていくのかな、と思います。
山田:高校までは「どうやって答えを出すか」が学ぶことだと思っていましたが、大学に入ってから、というか飯村研究室に所属してからは「どうやって問題を探すか」が学ぶことなんだと感じています。社会にはどんな問題、課題が広がっているのか。課題の発見って、本当に難しいって実感しながら取り組んでいます。
──課題発見力、そしてテクノロジーをどう応用するかという解決力。
山田:あと、我慢する力や対応力も大事だと思います。アプリ開発をしているといつも思うんですが、プログラムを書くたびにバグが生じてエラーが出る。最初はエラー表示にいちいちイライラして、投げ出しちゃったりしていたんです。
でも、最近は「プログラムってそういうものなんだ」って自分に言い聞かせてやってます(笑)。バグのおかげで、どんなものでも常に問題は生じるし、乗り越えていけることを学びました。
秋岡:そうですね、バグ対応はつきものなんですが、その都度落ち込んだりしないで、柔軟にそれを受け入れて次を考える。アプリ開発を始めてから、いつの間にか根性がついた気がします(笑)。