Macをさわったのも大学に入ってから
──秋岡さんはアップルのティム・クックCEOを前に英語で自作アプリのプレゼンをしたんですよね。秋岡:世界中のプレゼンターが参加するバーチャルミーティングでの発表で、事前に何度も練習していたので、あとは思いっきりやるだけだと思っていたんです。ところが、ミーティング開始5分か10分後だったと思うんですけど、突然ティム・クックさんが画面に参加されたんです。「え? どうして? 事前にそんな話はなかったはずだけど……」とびっくりしたんですが、気持ちを立て直してプレゼンしました。
──ティム・クックさんからはこんなコメントをもらったそうですね。
「人々が日本の伝統文化について学ぶお手伝いをしているのを見せてもらいましたが、とても素晴らしいことだと思います。彼女はすでに地域社会への重要な貢献を果たし、よりよい未来を形作るための後押しをしている新しい時代のアプリ開発者の一人ですね」。
秋岡:ミーティング中は頭が真っ白というか、そんな感じだったので、いただいた言葉も後になってからようやく理解できたんです(笑)。本当にうれしかったです。
山田:僕はプレゼンのミーティングに参加できなかったんですが、それでも世界と繋がっている感覚を体験できました。たとえばアプリ開発の背景や意義を350ワードの英語で提出するのが必須だったんですが、この課題に取り組みながら、テクノロジーを通じて世界中の仲間と一緒に、それぞれの社会課題の解決に挑戦しているんだという気持ちになれました。
秋岡:そうですね、世界にはこんなすごい同世代がいるんだって。
──お二人はもともとデジタルに親しんでいたんですか? プログラミング教育を高校までに受けていたとか。
秋岡:いえ、私も山田くんも大学に入ってからプログラミングを学びました。
山田:Macをさわったのも大学に入ってからです。
秋岡:飯村研究室では大学2年時の前半にコーディングの習得を4カ月ほどかけて、しっかりとトレーニングするんです。私たち二人はそこで初めてプログラムというものを学びました。
山田:ですから、デジタルに親しみ始めてまだ1年ちょっとくらいですね。ただ僕たちの研究室はあくまで社会科学系の場所で、工学部にあるわけはなく、総合管理学部という学部にあります。飯村研究室が掲げているのは「人とコンピュータとが豊かに共存し、安全で安心できる快適な社会の実現に貢献する」というもの。プログラミングを勉強するというのは、あくまでテクノロジーを使うとこういうことができるんだ、ということを体で覚えるようなことなのかと思っています。