「今日の自分に関しては、本当に不甲斐ないのひと言しかない。自分の下手さ、未熟を思い知った。クソみたいなプレーの数々だったけど、それが自分のすべてだった」
自らの現在地を過激な表現で振り返った浅野は、年明けから再開されたドイツでの戦いに臨んだ。浅野の言葉を振り返れば、大胆不敵な自己暗示をかけていた跡がわかる。
「自分を警戒する対戦相手が間違いなく増えてきた。世界中が見ているワールドカップという大会でゴールを決められた、というのはあるかもしれないですね」
ドイツの出鼻をくじき、グループリーグ敗退に追い込んだストライカーとして認知度が一気に高まる。特にドイツの国内リーグで対峙する相手から必要以上に警戒される。浅野は「実際にどう思われていたのかはわからない」と断りを入れながらさらに続けた。
「個人的にはどの試合でも、自分がマッチアップで負けている、という感覚はなかったですね。シンプルな部分で成長している、という手応えはずっとあったので、それも自信となって相手にも伝わっているのかな、というのは感じていました」
具体的な根拠は何ひとつない。それでもメンタル面で常に優位に立っている、と自分に言い聞かせてきた浅野はリーグ後半戦の19試合すべてでピッチに立ち、負ければ2部チームとの入れ替え戦に回る5月末の最終節で八面六臂の大活躍を見せた。
6位のレバークーゼンをホームに迎えた一戦では先制点をアシストし、さらにダメ押しのゴールも決めた。今年に入ってから決めた3ゴールのうちのひとつを、チームが断崖絶壁の状況で迎えた大一番で決め、3-0の快勝と14位での1部残留に導いたのだ。
ボーフムを救ったハイパフォーマンスは、地元紙の採点で最高評価を与えられた。浅野は「これまでもそうですけど、自分でも『持っている』という感覚はありますね」と苦笑しながら、自身が歩んできたサッカー人生をこんな言葉で振り返っている。
「常に『できる』という自信を持ちながらプレーしていますし、その結果がどのタイミングで出るか、というだけだと思っています。確かにヒーローになれるタイミングというのはちょこちょこと、もしかすると他の人よりも多いかもしれないけど、僕自身はさらに大事なものを求めてきた。具体的には常に結果を残せる選手になりたいので、その意味ではまだまだ成長しなければいけない、という思いの方がはるかに強いですね」
ポジティブな姿勢と究極の自己暗示は、言うまでもなく不断の努力に導かれている。常に前を向く立ち居振る舞いを介して、生きていく上で大切なものを教えてくれる浅野はいよいよ開幕したドイツ1部リーグで、ボーフムにて3シーズン目、ヨーロッパ通算では8シーズン目の戦いに挑んでいる。