アジア

2023.08.23 17:30

インバウンド関連銘柄に懸念される2つの不安材料とは?

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同期の売上高構成比率を国・地域別にみると、日本を除くアジアが34%、米国24%、フランスを除いた欧州15%、フランス8%、日本7%となる。このうち、日本を除いたアジアは1月から3月の既存事業の売上高が前年同期比14%増だったのに対し、4月から6月は同34%増と伸びが加速しており、中国が牽引役になったのは明らかだ。
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世界有数の富豪として知られるLVMHのベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)は6月に中国を訪問。同国重視の姿勢が鮮明だ。フランスの新聞「ル・フィガロ」の電子版によると、アルノーCEOは「中国の指導層は非常に聡明で、これからの時期を同国経済の再活性化に使うと確信している」などと言明。「もしそうならば、中国の市場には自信があり、楽観的でさえある」と強調した。

通信社のロイターは1月、「中国人は2020年の初めまで、高級品の約7割を海外で購入していた」と報じた。今後、中国人の海外旅行意欲が回復すれば、LVMHなどラグジュアリー企業の収益を一段と押し上げそうだ。

インバウンド関連銘柄に過熱感

ただ、日本株市場では、「インバウンドという材料には過度に期待しないほうがいい」と警戒する声も聞かれる。その理由の1つは関連銘柄の一部に過熱感が出てきたことだ。前出の三越伊勢丹ホールディングスの株価は8月14日に1793円まで値上がり。上昇率は7月14日からの1カ月で約27%に達した。「Jフロントリテイリング」「高島屋」「H2Oリテイリング」など同業他社の株価も軒並み、急騰を演じた。

もう1つの不安材料は、中国景気の減速である。ゼロコロナ政策の撤廃後も個人消費の戻りは鈍く、不動産市況の低迷などを背景にした先細りへの懸念がくすぶっている。
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8月17日には2021年に経営危機が表面化した中国の大手不動産会社「中国恒大集団(エバーグランデ)」が、米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。

同国不動産最大手の「碧桂園控股(カントリーガーデン・ホールディングス)」も資金繰り難に直面。一方で、デフレ観測も強まっており今後、不動産と物価の同時下落というバブル崩壊後の日本経済を想起させる事態に陥るリスクが取りざたされている。こうした「ジャパナイゼーション(日本化)」が進行すれば、インバウンド需要は減退しかねない。
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文=松崎泰弘

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