2023.08.16 12:00

オーバーツーリズムに悩む欧州、各都市の観光客「抑制」策とは

2023年7月22日 スペイン マヨルカ島のイレテスのビーチ(Getty Images)

2023年7月22日 スペイン マヨルカ島のイレテスのビーチ(Getty Images)

世界観光機関(UNWTO)は、国境を超えて旅行する人の数は2030年には約18億人に達すると予測している。そうしたなか、欧州では文字どおり「多すぎる」観光客への対応に苦慮する各地の観光名所で、地元住民が従来の生活を維持できない状況になっている。

人気の観光地は過密になり、安全が損なわれ、旅行者たちにとっても快適に過ごせない場所になっている。いまのところ、欧州連合(EU)が正式な声明を発表するまでには至っていないものの、あふれかえる観光客にどのように対応すべきかについて、議論が進められている。

以下、すでに何らかの規制を導入したいくつかの都市と、それぞれの対策を紹介する。

・フランス

フレンチリヴィエラとも呼ばれるコートダジュールの中心都市、ニースにはこの夏、観光客が特に多い場所に一風変わったストリートアートが登場した。アイスクリームを「エサ」として仕かけた巨大な「ネズミ捕り」のようなこのインスタレーションは「観光客という害虫を根絶・撲滅させる」ためのものだという。

ユーモラスなアプローチではあるが、オーバーツーリズムに対して地元住民が抱く感情を、明確に表すものだ。

・イタリア

ベネチアのラグーン(潟)への大型クルーズ船の乗り入れを2021年に禁止したイタリアは、首都ローマにある「トレビの泉」と「スペイン階段」についても、観光客の行動を制限する措置を講じている。また、入場者数を管理することによってパンテオン神殿を保護するため、入場を有料化した。

また、フィレンツェ市は2023年6月、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に指定されている市内の歴史地区で、物件を短期のバケーションレンタル用として新たに登録することを禁止した。

イタリア・リビエラ海岸の町、ポルトフィーノは新たに条例を制定し、観光客が自撮り写真のために特定の地点に長くとどまることに対し、最高275ユーロ(約4万3000円)の罰金を科している。

・オランダ

アムステルダム市議会は、大型クルーズ船の入港を禁止した。これは、観光客に同市を訪問しないよう呼び掛ける活動の一環。

また、歓楽街の路上での大麻の使用を禁止したり、若い英国人男性を対象とした「訪問お断り」のキャンペーンも展開している。人口100万人未満の同市には毎月、平均100万人以上の観光客が訪れている。
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編集=木内涼子

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