フェルナンデスはその縦軸を未来につなぐ重要性を強調する。「食文化を築いた先人、そして道を拓いてくれたシェフたちの努力があってこそ。南米へのスポットライトが一過性のものにならないように、私たちの世代が、そのバトンをきちんと未来につないでいきたい」
同時に、いま社会が直面している戦争や気候変動といった課題について、過去から学ぶべきことがあるとも説く。それはかつての人々が通ってきた道でもあるからだ。
「たとえば、モライ遺跡は、人口増加に伴う食料不足への対応を目的とした農業研究所だったと言われています。AIやメタバースもいいでしょう。でも、過去の間違いから学び、忘れ去られてしまった知恵を今の暮らしに当てはめて生きることもひとつです。現代のテクノロジーと合わせれば、私たちはより賢く生きることができるはずです」
今年の春、彼はMAZで提供するワティアに入れていたジャガイモを、旬の山菜に変えた。冬が終わり、春の訪れを告げる山菜を尊ぶ日本人の気持ちに、アンデスに暮らす人々と変わらない「自然の恵みに感謝する」思いの深さを感じたからだ。
「日本とペルーにはたくさんの共通点があります。アンデスの人々は、願掛けをするときに山に祈ります。日本にも、願掛けのために山に参詣する人がいると知り、同じような自然への敬意が根付いているのだと感じました。日本とペルー、場所は違えど、根底にある大切なものを思い起こさせる料理を、この東京で作り、発信していきたいです」
サンティアゴ・フェルナンデス◎1995年ベネズエラ生まれ。スペインの料理大学に在学中からセントラルのオーナーシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネスのもと、ペルーの食文化の研究を行う。卒業後セントラルチームに加わり、として世界各国のポップアップに参加した後、ヘッドシェフに。2022年7月より現職。(着用衣装 ジャケット 61600円、シャツ 39600円 ともにアスペジ/トヨダトレーディング プレスルーム TEL 03-5350-5567)