宇宙

2023.08.13 11:30

火星に新たな謎 「自転が加速中」 NASA

NASAの火星着陸探査機インサイトを描いた想像図(NASA/JPL-Caltech)

火星はぐらついてもいる

研究チームはさらに、RISEのデータを用いて、液体核のスロッシング(振動)による火星のぐらつき(章動)を測定した。
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火星の核の半径は、研究チームの予測よりも150kmほど大きい。これは、火星の核がこれまで考えられていたよりも低密度で、鉄がはるかに少なく、硫黄が最大20%近く多く含まれることを意味する。核は液体なので、岩石質の上部マントルとは独立して移動できる。数カ月~1年の周期で発生する火星のぐらつきを引き起こすのは、内部の核におけるこの振動なのだ。

研究チームによれば、火星と地球はどちらも鉄が豊富な核があるが、軽い元素の含有量は火星の核の方が2倍以上大きい。また、火星の核の硫黄含有量は10倍以上大きいと、チームは指摘している。

硫黄により核が低温で融解状態を維持

論文の共同執筆者の一人で、NASAジェット推進研究所のインサイト主任研究員ブルース・バーナードは筆者の電話取材に応じ、現在の火星には磁場はないが、地質学的過去には磁場があったことが知られていると説明。核に含まれる硫黄のおかげで、核が比較的低温で流動状態を保ち、磁場を維持できていた可能性が高いと語った。

このことは、さまざまな影響を及ぼしたと考えられる。太陽風の浸食作用から大気を保護するのもその一つだ。その結果として、太古の火星が温暖で生命の存在が可能な状態をより長期間維持できたと考えられる。

まとめ

論文の主執筆者で、ベルギー王立天文台のRISE主任研究員のセバスチャン・ルメストルは、筆者の電子メール取材に応じ、今回の最新の測定結果により、火星の核の液体状態と大きさの独立した確証と、核の形状に関する情報が初めて得られたと説明。核に関する今回の最新データは、火星の形成と進化の過程解明に役立つと指摘した。
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バーナードによると、今回の研究結果により、私たちは初めて、火星内部の地図を入手し、地殻の厚さと核の大きさを知ることになった。この情報によって、核の組成に関する詳細が明らかになるという。インサイトが火星の深部を探る窓を開いたことで、科学者らは火星と他の惑星との比較に着手できると、バーナードは指摘。さらには、火星が過去45億年間にたどった独自の道筋の調査や、地球との違いの解明に着手できると語った。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔・編集=遠藤宗生

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