BYDは、今年の春に納車が始まったばかりなので、イギリスでも実際に路上で見かけることはまだない。とはいえ、ロンドン中心部の貴族などが昔から居を構える超高級メイフェア地区に、今年後半に旗艦ショールームを登場させるという。日本も韓国も、まだロンドン周辺にディーラーがあるだけなので、「熱」の入れようが凄まじい。
簡単に言うと、日本メーカーのEVに対する考えと、中国メーカーの考えの一番の違いは、深さだと言えるだろう。どういうことかというと、後発のメリットでもあるが、中国のメーカーはほぼEV開発にしか力を入れていないが、ガソリン車、ハイブリッド車、水素燃料電池車、そしてEVを作り続けている日本のメーカーは、中国のメーカーにまったくついていけてないと思う。
確かに、数年前までは、中国車は各国のNCAP衝突実験で不合格の数字が続出していたけど、現在の同テストでは、5星を獲得しているメーカーが多くなってきている。
中国はすでにテスラを含めて年間2,380万台の自動車を製造しており、そのほとんどがEVだ。そして中国には、さらに何百万台もの自動車を製造するのに十分な土地、労働者、資金、そして新興勢力としての意気込みがある。
そうなると、日本(660万台)と韓国(340万台)は、中国に比べればたいしたことはない。とはいえ、韓国はまだ強い。2021年から22年の間、ヒョンデ・アイオニック5とアイオニック6が、世界最高峰「ワールド・カー・アワード賞」を連続で獲得しており、ヒョンデのEVは「世界で最も優秀」との評判を獲得しているからだ。そこに、中国のEVメーカーが誰も止められない巨大な鯨のように、すでにイギリスに向かって猛スピードで向かって来ているのが現状だ。
70年代の日本の嵐の後、80年代には韓国の波が押し寄せ、今年から中国車の津波が英国にやってくる。それは単に私が予測しているだけではなく、保証さえできる。トヨタのみならず、日本のメーカーにはこの潮流に置いていかれなでほしい。
だって、日本のカーメーカーには、EVを作れる優秀なエンジニアが有り余るほどいるのだから、彼らをぜひ早いうちに活用してほしい。もうこれ以上EV波に乗り遅れないよう、切に願っている。
国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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