不平等は単に貧富の格差だけではない。社会でうまくいっている人を見たとき、必ずさらにうまくいっている人がいる。つまり、所得分布のどの階層においても不平等がある、ということだ。その不平等が上層部や中層部の親を刺激すればさらなる努力や投資を行い、子どもを塾や習い事に通わせたり、課外活動に参加させたりすることになる。
下層部ではそうしたことをするお金や時間がないため、ますます競争に参加することが難しくなる。これを解決するためにはまず何らかの方法で経済格差を縮小することにあるが、もうひとつは、例えばスポーツ推薦を得るためにある競技でトップにならねばならず、そのために膨大な時間と費用をかけるというような、子どもたちが本当に楽しめていない、何かをアピールするためだけに行われている活動へのリターン(対価)を減らす方法もある。
過度な受験重視もよくないが、課外活動重視はさらに弊害があると考える。
ファブリツィオ・ジリボッティ◎イタリアのエミリア・ロマーニャ出身。1994年にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学博士号を取得。スイス、スウェーデン、中国などを拠点に研究し、専門は開発経済学、政治経済学、中国の経済発展。共著書に『子育ての経済学 愛情・お金・育児スタイル』(慶應義塾大学出版会)。スペイン人の妻との間にひとり娘がいる。