経営・戦略

2023.08.14 17:00

3億円の呪縛を超え、見出した「新たな幸せ」

金銭に価値を置かない幸せのあり方

36歳でエス・エム・エス代表を辞任した諸藤は、東南アジアに飛んだ。そこで自分のやりたいことを新たに見つける。

「エス・エム・エスでは、社会との繋がりを感じながら会社の成長を楽しんでいきましたが、次第に、ただ会社を成長させるだけでなく、産業ができる構造に興味が湧きました。考えていくうちに、人の内面や学習の構造にも興味が湧いていました」。

諸藤は2014年、リサーチ(研究)とプラクティス(実践)を組み合わせて名付けた会社「REAPRA(リープラ)」を立ち上げる。研究と実践を切り離さずに、試行錯誤することで、世代をまたぐような社会課題を解決する多くの産業をつくり出したいとの思いからだ。

「世代をまたぐ社会課題を解決するような人は、志が高い人でも、能力が高い人でもない。自分の限界に直面し、自己喪失のはざまにある人が、自らの生きづらさを社会に跳ね返そうとしてエネルギーに変えられた時に、長い時間をかけて学習しながら産業をつくることできる。その人らしさに向き合うことが重要だと思っています」

株式会社のいまのシステムを含みながら、現在の資本主義のなかで、社会構造を変えることを視野に入れて長期的かつ持続的な幸せのかたちを模索している。

もうひとつ、諸藤が力を入れるのは、自身も適合できず、苦労してきた「教育」だ。

「不確実な未来に対して、教育はどうしても遅行する。子どもたちはその犠牲を払うという構造になっている」。それをなんとかしたいと「一般財団法人 活育教育財団」を立ち上げた。3億円の呪縛から放たれ、お金がすでにコモディティ化した諸藤にとって、幸せとは何か。「自分の好きなこと、学びたいことを軸にし、その延長線上にお金を置いたほうが幸せになれる。その文脈から社会課題を解決することが正しい道だと僕は信じています」


諸藤周平◎1977年生まれ。九州大学経済学部卒業。エス・エム・エスの創業者、社長として同社の東証一部上場、アジア展開などを牽引し、退任。2014年にREAPRAをシンガポールにて創業。アジアを中心に、社会課題を解決する産業の創造に向けた学習支援をおこなう。9世代先を見据えた社会づくりを模索する一般財団法人雲孫財団も運営。

文=橋本史郎、フォーブス ジャパン編集部 写真=小田駿一

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