キャリア・教育

2023.08.03 10:00

自分の人生を取り戻す新しい時間のとらえ方「時間を払う」

似た事例はほかにもあります。少し前に盛り上がったW杯やWBC。スポーツ観戦って不思議ですよね。(こう言うと怒られそうですが)見ても見なくてもたぶん結果は同じだし、試合結果とハイライトで大体キャッチアップできます。わざわざ何時間もかけて観戦する必要は必ずしもありません。
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でも生の観戦に「時間を払う」ことで、何にかえがたい楽しさと興奮が得られることには同意いただけるでしょう。冒頭の話でいう徒歩的な体験です。一方で、早送りで観る映画や切り抜き動画がはやっています。こちらはタイパ重視でとてもタクシー的な体験といえます。
スタジアムでしか味わえないあの 熱狂や興奮は、観戦に時間を払 っていた人だけの特権。

スタジアムでしか味わえないあの熱狂や興奮は、観戦に時間を払っていた人だけの特権

「時間通帳」で、時間のとらえ方を変える

「時間を払う」というコンセプトを実感するために、ひとつ物語を考えてみます。

すべての人は、ひとりひとつずつ「時間通帳」と呼ばれる通帳をもっています。毎日0時になると、時間通帳には24時間という時間が振り込まれます。僕らはそこから、時間を払って、睡眠をとったり、ご飯を食べたり、仕事をしたりしています。この時間通帳が不思議なのは、時間をためることができず、自分で時間を払わずにいると誰かが勝手に使って消えてしまうことです。

スケジュールが誰かの予定でビチビチに埋まりがちな人は、時間通帳の時間を誰かに使われているかもしれません。その時間は自分が払いたいと思って払っている時間でしょうか。それとも誰かに勝手に使われて無理やり払わされている時間でしょうか。自分のために払える時間は、通帳にちゃんと残っているでしょうか。
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とても逆説的ですが、自分で時間を払ってはじめて、自由な時間が通帳に入っていた事実に気づくことができます。資本主義的な合理性から外れてはじめて、自分の時間が自由だったことに気づくことができます。あらゆるモノやコトがサービス化し、欲しいと思ったら瞬時に手に入る時代を生きる僕たちにとって、時間を払い、コストをかけて、わざわざ何かの体験に身を浸すことは非合理的に思えるかもしれません。でもあえてそこに「時間を払う」人だけが、自分の時間通帳から時間を引き出し、合理性から逃れた自分だけの人生=時間の使い方を見つけることができるのではないでしょうか。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

山根有紀也◎電通Bチーム薬学担当。株式会社ONEのデザイナー/ストラテジスト。主にヘルスケアを中心とする新規事業を担当。薬学専攻→電通→デザインと立場を変えつつも一貫して「人の知覚と認知の仕組み」に興味。

文=山根有紀也 イラストレーション=尾黒ケンジ

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