同社が提供する「MIAGERU(ミアゲル)」は、エレベーター内上部に小型のデジタルサイネージを設置し、広告動画を配信するものだ。2018年に創業し、現在は主に東京都内、千葉、神奈川、埼玉のマンションやオフィスビルエレベーター260カ所でサービスを展開している。
エレベーター広告は、タクシー広告などに続く新たな広告媒体として、中国では3億人近くが閲覧するなど、急成長を遂げている。日本でも、三菱地所が資本参加して合弁会社を設立した「東京」や、エレベーターメンテナンス会社として国内独立系でトップシェアを誇る「ジャパンエレベーターサービスホールディングス(JES)」が参入している。
マンションへの導入で差別化
エレベーター広告で映像を配信する場所は、エレベーターホールとエレベーター内の2種類がある。mark&earthの「MIAGERU」は後者で、エレベーター内にモニターを取り付け、6秒の広告動画を配信する。1カ月におよそ128万人にリーチできるといい、エレベーター利用者は広告のほか、ニュースや天気予報、エレベーターの点検予定日の案内などさまざまな情報が得られる。ただ、会社設立後、広告主はなかなか現れず、しばらくの間はデジタルサイネージ設置に注力した。それが2023年に入って広告主獲得を強化すると、問い合わせが急増して広告主は20社に増えた。大手デリバリーチェーンや、電動マイクロモビリティのLUUP、M&A仲介のウィルゲートなどが出稿している。
日本におけるエレベーター広告市場では、東京がトップシェアを誇り、mark&earthは追う立場にある。しかし、代表取締役である金子京史は「狙っているマーケットが全く違う」と、意に介す様子もない。
他社を見ると、エレベーターメンテナンスが本業であるJESは、自社で保守・管理するエレベーターを中心にサービスを展開し、東京は関係の深い三菱地所系をはじめとした大規模ビルのエレベーターがターゲットとなる。それぞれ、大規模オフィスビルまたは全国のマンションでの導入を進めているのだ。
一方、mark&earthの「MIAGERU」は、導入先の約7割が単身者用をはじめとするマンションのエレベーター。残りの約3割はオフィスビルなどで占められるが、その多くも中小規模ビルとなっているため、他社との差別化が図られている。
金子は次のように話す。
「例えば、渋谷区に大規模ビルやマンションがどれくらいあるかと言えば、全体の1割ほど。私たちとしては、残りの9割の建物にも広告価値をつけたいと考えています。また、他社も広く見れば同じ市場にはいるものの、競合しているとは言えません。これから成長を辿っていく市場ですので、まずは一丸となって『マーケットを作る』ことが大切だと考えています」