今回は、日本金融経済研究所の代表理事である馬渕磨理子さんによる「スタートアップ政策 馬渕磨理子はこう見る」コーナーから、7月9日の配信記事を掲載します。
今年7月1日、日本証券業協会が制定した新たな規則により、私設取引所(PTS)で未上場企業の株式を取り扱うことが可能になりました。
PTSは、証券取引所を介さずに株を売買できるシステムのことを言います。
ルール上は、日本の有名なユニコーン企業であるPreferred NetworksやSmartHRの株式を取引できるという事です。夢がありますね。
特に米国はPTS活用が進んでいます。Forge Globalなどの企業によって未上場株の取引所が運営されていて、サービスを利用する投資家は認定投資家と呼ばれ、ベンチャーキャピタルや富裕な個人投資家などです。Forge Globalだけで2022年3月時点で40万人以上のユーザーがいます。
しかし日本では、まだそのマーケットに参加する投資家の数は十分ではありません。日本では純資産が1億円もしくは収入が1000万円以上あり、かつ金融や経営の知識がある投資家が参加できる「特定投資家」制度が、米国の認定投資家にあたりますが、大手証券会社5社に登録しているのは、2020年時点で約100名程度。その後制度改正があったので、増加していることが予想されますが、マーケットとして成立するような数ではありません。特定投資家には機関投資家も登録できるので、参加を期待したいところです。
まだ現時点では、投資家が未上場株を売買できるPTSはありません。「株主コミュニティ」という制度を用いた証券会社で、ごく一部の未上場企業の取引が行われているのみです。
また、企業側もこのセカンダリーマーケットを利用するにあたり、企業情報や計算書類、発行する株の情報といった特定証券情報を用意する必要があります。未上場企業にとっては情報整備と、既存投資家との合意がとれるかがカギになってくるでしょう。
セカンダリーマーケットが円滑に運営されるには、まだまだ乗り越えないといけない壁があります。
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