AI導入進めるディズニーやNetflix 米エンタメ同時スト、真の影響はこれから

Photo by Mario Tama/Getty Images

100日以上ストライキを続けている全米脚本家組合(WGA)は、全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)との交渉を8月11日に再開したが、22日にAMPTPが公表した新たな提案を拒否。ストの継続を訴えた。

WGAと映画俳優組合 - ⽶テレビ・ラジオアーティスト連盟(SAG-AFTRA)が同時に起こしているストは経済的な影響も大きく、長期化が懸念されてきた一方で、秋頃にはWGA側が交渉のテーブルにつき、その流れで収束するのではないかとの楽観論もささやかれていた。この調子では果たしてどうか。何れにせよ、両サイドの溝は簡単に埋まりそうにない──。

世界の映像コンテンツ市場をけん引する米国のメジャースタジオやTV・ケーブルネットワーク、NetflixやAmazon Primeなどのストリーミングサービスは、現在もこのダブルストライキにより、新作品の制作が停止されている。

劇場映画は年末から、TVとストリーミングは9月以降、組合員が関与する新作のリリースが不可能となることから、コロナ禍が終焉し、堅調が期待された映像制作・配給産業に逆風が吹き、関連企業の株価への影響を余儀なくされている。
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また、9月18日に予定されていた米テレビ界最高の栄誉「エミー賞」開催も、来年の1月15日に延期されることが発表されている。

ディズニーのボブ・アイガーCEOが「コロナ禍を経て、ようやく回復基調にある業界に対して、最悪のタイミングで無謀なストを打つ組合の行動は理解できない」と発言したのに対し、組合側は『ブレイキング・バッド』主演のブライアン・クランストンが7月25日ニューヨークでのラリー(デモ)で「アイガーは俳優が演技をして真っ当な暮らしが出来る権利を奪おうとしている」と演説するなど応戦。

Netflixが最高年収90万ドル(約1億3千万円)で「AIを利用するアプリケーションエンジニアからのフィードバックを把握して、アルゴリズムと番組開発を戦略的思考できる人物」を募集していたことも露見して、組合側は「90万ドルあれば、SAG-AFTRAの組合員35人とその家族に医療保険を供与することができる」と批判し、対立は激化していた。

ディズニーもストライキ以前にすでに「AI検討タスクフォース」を立ち上げており、現在11件の求人を出していると8月8日にロイターが報じている。
ディズニーCEOのボブ・アイガー氏(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

ディズニーCEOのボブ・アイガー氏(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

技術革新のたびにストライキ

ハリウッドを中心とする米映画・テレビ産業では、新たなテクノロジーの導入によってビジネスモデルが革新される度に、利益分配を巡って制作配給企業と脚本家・俳優組合が対立し、ストライキが起こる事がパターン化されてきた。

1960年には、WGAとSAGがそれぞれ42日と148日間のストを敢行し、映画の放映権がテレビ局に販売された場合に、その契約料の一部を脚本家と出演者が分配金(レジデュアル)として受け取る権利を獲得した。1980年から81年にかけて行われたSAGによる90日スト、WGAの92日ストによりペイテレビとホームビデオに映画が配給された場合の分配金を要求、SAGはVHS出荷グロス売上の4.5%を獲得した。

今回のWGAとSAGにAFTRAが加わった同時ストライキは63年ぶりだが、AMPTP(全米映画テレビ制作者協会)への要求は2点ある。
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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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