AI導入進めるディズニーやNetflix 米エンタメ同時スト、真の影響はこれから

宇藤 智子
リタイヤしたと思われていたジェーン・フォンダは7月28日ロサンゼルスNetflix本社前のラリーで「事前承諾や報酬無しに俳優の権利をAIに奪わせることは許さない」と主張し、公開中の『ミッション:インポッシブル』最新作にトム・クルーズの相手役として出演しているヘイリー・アトウェルも「スタジオ・ボスたちは技術の進化に対して妥当な手を打っていない。どのように技術をアダプトするか、ルールを先に考えるべきだ」と意思表明。

『ロード・オブ・ザ・リング』ゴラム役のアンディ・サーキスは「私は映画俳優として合成映像の為に最も多くのボディースキャンを受けてきたと思う。SAGの成功を祈る」とルールなきAIの導入への懸念を間接的に唱えている。
ジェーン・フォンダ(Photo by Mario Tama/Getty Images)

ジェーン・フォンダ(Photo by Mario Tama/Getty Images)


この米国内のストの影響は、SAG-AFTRA組合員が出演するハリウッド作品が多く撮影される英国にも波及。ヒュー・ジャックマンの復帰が話題のマーベル作品『デッドプール3』や、アリアナ・グランデとシンシア・エリヴォ主演のブロードウェイ・ミュージカル映画版『ウィキッド』などの撮影が中断されている。

組合員4万7千人の英国俳優組合(Equity)は、2年ごとに制作配給側との契約交渉を行っているが、今年末に始まる次回の更新交渉に先んじて、AI導入については既に民放最大手ITVとの交渉を前倒しで開始、二重登録会員も多いSAG-AFTRAとの連携も検討を進めている。

今回のストは、脚本家や俳優の視座に立てば、明らかに論理的な根拠に基づいたものであるものの、シビアな利益追求が求められる大手スタジオや制作会社にとっては、技術の進歩による経営効率化を抑止されるものでもある。63年ぶりの大規模ストの行方は、少なくとも今後2、30年にわたり、映像産業の構造に大きな影響を与える。

連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点

文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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