Karat Financial(カラット・フィナンシャル)共同創業者のエリック・ウェイとウィル・キムは、この状況を変えようとしている。「たとえ数百万ドルを稼ぐユーチューバーであっても、大手の銀行に行けばゴミのように扱われるかもしれません」と、かつてInstagram(インスタグラム)のプロダクトマネージャーを務めていた時にこの問題に気づいたというウェイは話す。
クリエイター向けにクレジットカードと金融サービスを提供するカラット社は7月19日、新規で7000万ドル(約98億7000万円)を調達したと発表した。このラウンドは、SignalFire(シグナルファイア)が率いた4000万ドル(約56億4000万円)のシリーズBのエクイティ調達と、TriplePoint Capital(トリプルポイント・キャピタル)からの3000万ドル(約42億3000万円)のデットファイナンスで構成され、ウィル・スミスと本田圭佑が設立したDreamers VC(ドリーマーズVC)なども参加した。
2019年に設立されたカラット社の累計調達額は1億ドル(約141億円)を突破した。同社のこれまでの投資家には、YouTube(ユーチューブ)共同創業者のスティーブ・チェンや、Twitch(ツイッチ)共同創業者のケビン・リンなどのテクノロジー業界の大物が含まれている。
ロサンゼルスを拠点とするカラット社は、以前からクリエイター向けの法人クレジットカードを提供しているが、ウェイとキムはVisa(ビザ)とのパートナーシップを通じ、クリエイターが個人のクレジットヒストリーを作るための新たな銀行カードを立ち上げると発表した。
カラット社は、各クリエイターのフォロワー数に基づくソーシャルクラウト(social clout)と呼ばれる影響力を評価して、クレジットラインを提供している。「大手銀行やカード会社はまだクリエイターの分野に進出していません。なぜなら、彼らはこの分野をニッチで小規模なものだと考え、新たな査定モデルを開発する価値がないと見ているからです」とウェイは語る。
ウェイとキムは、カラット社のプラットフォームを、クリエイターのニーズを満たす金融サービスのワンストップショップにするために規模を拡大していくと述べている。
レンディングサービスも準備中
「現状で私たちは、貯蓄や支払い、経費の管理といったニーズごとに別のサービスを使っていますが、それを一カ所にまとめたいのです」と、2022年のフォーブス「30アンダー30」に選ばれたキムは話す。カラット社は、クリエイターがスポンサーとの契約金の前払いを受けるためのレンディング(貸出)のサービスの立ち上げも計画中という。ユーザー数は明かされていないが、同社は2021年のシリーズAで460万ドル(約6億4800万円)を調達して以降に、顧客数を5倍に伸ばした。さらに、カラット社のクリエイターカードの所有者のSNSフォロワー数は合計で10億人を突破したという。
2人は、カラット社を将来的に、アーティストやクリエイター、フリーランサーのためのファイナンシャル・パートナーにしようとしている。「過去10年の間に、クリエイターという仕事は、ニッチなものからクリエイター・エコノミーと呼ばれる産業に変化してきました。この分野の拡大はまだまだ続きます」とウェイは語った。
(forbes.com 原文)