デジタルの力で患者をサポート
新しいデジタル技術は、医療のアウトカムを改善するとともに、患者体験の向上に貢献する可能性も秘めています。がん治療においては、モバイルアプリケーションや遠隔医療を中心にさまざまな既存のデジタルツールを通じて、自宅という比較的快適な環境で治療の一部を行えるようにすることで、患者とその家族をサポートする試みが行われています。VR(仮想現実)についても、がん治療において、患者教育や患者の不安管理など幅広い用途で有用性が高いことを示唆する報告があります。他の疾患の治療では、VRを活用した疼痛管理のソリューションが米食品医薬品局(FDA)の認可を受けたケースも出ており、将来的には、がん治療でも類似の技術が活用されるようになるかもしれません。
誰一人取り残さないがん治療を
がんで死亡する人の70%が低中所得国に集中しています。この事実を踏まえると、これらの新しい技術は、最も脆弱な人々がアクセスできるものであることが重要です。インドの地方部など資源が乏しい地域では、すでに新しい技術がきわめて有望であることが示されていることからも、その重要性は明らかです。しかし、低中所得国の中には、財源の確保や、十分なインフラ整備、適切なスキルを持った医療従事者の確保など、デジタルヘルスの導入を阻むさまざまな課題を抱えている国も少なくありません。そうした国が、新しい技術と医療を結びつけるためには、資金提供などの国際的な支援が不可欠でしょう。世界保健機関の試算によると、全世界の90%にがん治療サービスを普及させるには、2030年までに1400億ドル以上の投資が必要です。
がんとの闘いにおけるデジタルイノベーションが続く今、世界のリーダーたちは、最も必要としている人々が、効果の高い革新的技術を利用することができるよう、そして、デジタルヘルス革命により、世界中のヘルスシステムがより公平でサステナブルなものになるよう、さまざまな取り組みを推進していく必要があります。
※本寄稿文は、Health News IEによる、#Innovations in Oncology Campaign 2023の一環として掲載された記事の和訳を転載したものです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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