食&酒

2023.07.23 16:30

シャンパーニュ ビルカール・サルモン、「特別な畑」の物語

鈴木 奈央
クロサンティレールは、この土地の個性を表していると判断された年にだけ作られる。例えば、2004年はいったん作られ、長い熟成を経たものの、最終過程である澱抜き(ディスゴージメント)の段階で、求められるクオリティに満たなかっため、リリースされなかった。冒頭のマチュー氏の言葉にあるように、品質を重視するメゾンであることがわかる逸話だ。

単なるぶどう畑以上の価値

この畑は、多様性を重視した栽培農法を行い、昔ながらの馬や羊を使った畑仕事をするなど、様々な試みを行う実験的な区画としての役割も担っている。

また、クロサンティレールのシャンパーニュからの収益の一部を地元のNPOに寄付している。これには、この地の歴史が関係している。ピノ・ノワールが植樹される前、この場所は家族のガーデンとして野菜や果物が育てられており、その食料は、苦しい戦時中、家族や従業員、村の人々の助けになっていたのだ。

こうした精神を受け継ぎ、基金を創設し、食料補助を行う地元のNPOに寄付をするなど、地域の持続可能な発展に寄与している。
家族の名前を付した数々のプレスティージュのシャンパーニュを作っているが、これは創設者ニコラ・フランソワの名を冠した「Cuvée Nicolas François」。今年2008年がリリースされた。

家族の名前を付した数々のプレスティージュのシャンパーニュを作っているが、これは創設者ニコラ・フランソワの名を冠した「Cuvée Nicolas François」。今年2008年がリリースされた。


マチュー氏が社長に就任してから、彼のリーダーシップから、数々の新しいアイデアが生まれ、実現している。歴史あるメゾンの今後の発展に注目したい。
ファミリーハウス

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島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文=島 悠里、写真=島 悠里、ワイナリー提供

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