ソノマを拠点とする醸造家、マイケル・クルーズの言葉だ。
カリフォルニアに5世代住んでいる家族に生まれ育った生粋のカリフォルニア人で、UCバークレー大学で生化学を学んだ後、ワインの世界に飛び込んだ。常に自分で何かを作り出したかったというが、緻密に分析して実践する性格がワイン造りに合ったようだ。
2016年にサンフランシスコ・クロニクル新聞で「ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれてから一気に注目を浴び、その後も順調に実績を積んできた。自身のブランド「クルーズ・ワイン・カンパニー(Cruse Wine Co.)」に加え、他ブランドのコンサルタントを務めるなど腕のいい醸造家であるが、中でも、彼が手掛けるスパークリング・ワインの「ウルトラマリン(Ultramarine)」というブランドは、皆が追い求めるカルトワインのステータスを得ている、カリフォルニアワインラバー憧れのワインに成長した。
筆者は、シャンパーニュやスパークリング・ワイン好きとして、カリフォルニアでも数々のスパークリング・ワインを試飲し探索しているが、冒頭の言葉にもある通り、マイケル・クルーズほど、カリフォルニアの畑や特徴を表現するスパークリング・ワイン造りに真剣に取り組む生産者を他に知らない。その点で、彼は唯一無二の存在になりつつある。
マイケルと筆者は、同じ北カリフォルニアに住むが、初めて会ったのはフランス・シャンパーニュだった。これには、彼が、シャンパーニュを度々訪問し、現地の生産者からスパークリング・ワイン造りを学び、実践してきた背景がある。
シャンパーニュの生産者からヒントを得ているが、彼のワインはシャンパーニュをコピーしたものではない。適用できるテクニックを採り入れつつも、カリフォルニアの良さを大事にし、個性を引き出し、その土地でしか表現できないものを作りあげているから、人々から支持されているのだ。
例えば、あるシャンパーニュ生産者から「ロゼを造るときにシャルドネを混ぜるといい」と教えてもらったことで、ウルトラマリンの最初のロゼはピノ・ノワール100%で造ったが、その後、シャルドネをブレンドするようになったという変化が見られる。
マイケルはこう語る。
「カリフォルニアのワイン造りの歴史は浅い。土壌もシャンパーニュより多様だ。シャンパーニュの生産者たちからはインスピレーションをもらっている。テクニックだけを真似ても意味がなく、カリフォルニアに応用しなければならない。自分たちの土地に合ったもので、いかに最上のものを造れるかに挑みたい」