また、筑波大学名誉教授 村上和雄氏による、密教仏教僧侶と一般人の遺伝子の比較を行った研究では、僧侶群に慈悲の心に通ずる共感性と関連する「抗ウィルス性遺伝子」と「血中代謝物マーカー」が見出され、慈悲が免疫機能の強化につながるという結果を発表している。
このような影響力を持つ慈悲を身につけるために、具体的に何をすれば良いのだろうか。その方法の一つが、「慈悲の瞑想」だ。
アメリカでは、慈悲の瞑想が不安やうつなどのネガティブな感情を減らすことができるといういくつかの研究結果がある。
イェール大学医学部による研究によると、慈悲の瞑想をしている人の方が、していない人に比べて、苦しみに対する感受性が軽減されていたり、視覚的な反応力がアップしたり、主観を示す後帯状皮質の働きが鈍化して他人への共感性が高まるなどの効果が報告されている。また、うつ症状の軽減、偏頭痛や肩痛といった慢性的な痛みの軽減、細胞の老化を防ぐなどといった研究結果もある。
慈悲の瞑想にもいろいろな方法があるのだが、ここでは私が指導いただいたワンダルマ仏教の山下良道氏のやり方を紹介しよう。坐禅の構えが望ましいが、椅子に座っても、立っていても良いので、瞑想をできる環境を整えた上で、下記に紹介する文章を心の中で唱えよう。
<慈悲の瞑想(ワンダルマ仏教の山下良道氏)>
ステップ1
「私が幸せでありますように。私が苦しみから解放されますように」
ステップ2
自分が好意を持っている人(家族、知人、先生など)を1人選んで、
「この人が幸せでありますように。この人が苦しみから解放されますように」
ステップ3
電車でたまたま隣りにいたくらいの赤の他人で、二度と会うこともない人を1人選んで、
「この人が幸せでありますように。この人が苦しみから解放されますように」
ステップ4
無性に腹が立ってくる、無性に嫌な思い出が蘇ってくるような苦手な人を1人選んで、
「この人が幸せでありますように。この人が苦しみから解放されますように」
ステップ5
自分も他人も、好きな人も嫌いな人も、無関心な人も、すべての人に向かって
「生きとし生けるものが幸せでありますように。生きとし生けるものが苦しみから解放されますように」
やり方としては非常にシンプルなので、すぐにでも試してみていただきたい。なんだかポッとあたたかい感触を身体に感じることができたら、ひとまずは効果ありだ。