例えば、マンゴーNFTの取り組みでは、サイト構築が上手な人が紹介するウェブサイトを作ったり、マーケティングが得意な人が情報発信のアイデアを出したり。それぞれの得意分野や好きなことを活かして、課題感を持って取り組んでいます。
消費者が値段を後付け、マンゴーNFTの挑戦
そこから生まれたプロジェクトのひとつが、今回のかわみつ農園のマンゴーNFTの販売です。NFTの保有だけでなく、マンゴーの苗木への命名権やオンライン観光農園の参加権を提供し、希望者の方にはマンゴー2kgをお送りします。さらに、今回は初めてNFT保有者自身が実際に「ポトリ果マンゴー」を食べた上で価格を決められる「値段を決めてイーサ」プロジェクトを展開しています。NFTを活用しつつも、農家と消費者の繋がりを作ることが大きな目的のひとつです。
私はこれから、農家と消費者が歩み寄っていかないと、持続可能な食や農業は達成できないと考えています。だからこそ、作る側と食べる側という隔たりのある考えは捨てて、農家と消費者が一緒に「美味しいものを食べ続けるには農業をどうするべきか」ということを考えてみたいと思います。
ただマンゴーを食べるだけではなく、どうしたらかわみつ農園のブランディングができるか。一緒に面白い企画を考えながら、これからの消費者のあり方を模索しています。
もう一点、このプロジェクトは、農作物を高く売るにはどうしたらいいのかを考える実験でもあります。マンゴーの売価は、ブランディングしても1個2〜3万円程度。正直、まだまだ安いんです。
例えば、ハイブランドのカバンは原価が低くても10万円以上で売れるという世界がありますよね。農家もVIP向けと一般向けの両軸で展開し、ファンを作らなければ持続可能な農業は難しいのではないかという仮定のもと、農作物を高く売るための実験をしています。
ですが、最近「NFTはオワコンだ」という声も囁かれています。実際に2022年にはNFT市場は盛り上がっていましたが、今年の2、3月から一転し、NFT市場が一気に萎み出してしまった。
普通に売れば3万円のマンゴーを10万円で売るということを、萎んだNFT市場でどのようにやるか。その方法は、簡単には思い浮かびませんでした。
そこから5人のプロジェクトメンバーでディスカッションを続けるうちに、足元に仲間がいることに気付きました。Metagri研究所は既にNFTを5種類発行していて、NFTを持っている方が100人以上います。その方たちはMetagri研究所の活動の楽しさも、農産物の美味しさも知っています。
そこで、彼らに対してNFTを売るのではなく後払いにしたらいいのでは、という逆転の発想が生まれました。みんなチャレンジャーなのでこの発想に乗ってくれて、「値段を決めてイーサ」を始めようと決意しました。
「値段を決めてイーサ」はまず、過去のNFTホルダーやMetagri研究所のメンバーなど、信頼している人たちにNFTを無料でお配りする。オンライン観光農園見学への参加券やマンゴーを無料で差し上げた後に、これら全てのサービスの値段がいくらだったか、個人で値付けしてくださいというシステムです。