その答えを得るには、宇宙における地球の動きに関する議論のスタート地点に戻るのが一番だ。もし、「自分はこの位置で、ある一定の速度で動いているから、目にしている放射線の背景が実際に均一になるのだ」と考えれば、宇宙には静止座標が存在することになる。われわれは自分たちの位置を維持するために、光速に近い速度で動くことになるが、わずかなずれが生じる。この双極子成分は秒速およそ368±2キロメートルの速さ、あるいは速度に呼応する。われわれが自分自身をまさにその速さで「押しあげる」か、現在の速さのまま約1700万光年移動するかすれば、あくまで夢想的ではあるが宇宙の中心と言える場所に留まり、宇宙論的展開を眺めている気分になれるはずだ。
対数目盛りで計ると、地球に近い宇宙は太陽系と天の川銀河だ。しかし、そのはるかかなたに数多くの銀河や大規模な宇宙のクモの巣、さらにはビッグバンの直後に発生したモーメントがある。われわれには、現時点で地球から460億1000万光年先にある宇宙の地平線の向こう側を観測することはできないが、いつの日か宇宙がもっと姿を見せてくれる日が来るだろう。今日、観測できる宇宙には2兆の銀河が存在するが、時間とともに、観測できる範囲は広がり、おそらく今はわかっていない宇宙の真実が明らかになるはずだ。WIKIPEDIA USER PABLO CARLOS BUDASSI
問題は、あなたが宇宙のどこにいようと、あなたは時間──ビッグバンから現在に至る時間──のどこかの瞬間に存在しているということだ。光が放たれると、その光はあなたが観測しているものの相対運動と宇宙の膨張によって進路が変わってはいるが、あなたは目にするものすべてをあるがままに見ることができる。
住んでいるところによっては、ある方向に秒速何百、あるいは何千キロメートルで進む動きに応じた、宇宙マイクロ波背景放射の中の双極子が見えるかもしれないが、あなたがそのパズルのピースになってしまえば、まさに地球からとらえられている宇宙──見えるかぎり全方向が均一な宇宙──の中心にいることになる。
ビッグバンから今に至る時間という観点から言えば、宇宙は地球を中心に広がっており、われわれが観測できる距離には限界がある。われわれがとらえられる宇宙は、実際の宇宙のごく一部でしかない。宇宙は大規模でありうるし、折り重なっている可能性も、無限である可能性もあるが、われわれにはわからない。確実にわかっているのは、宇宙は広がりつづけているということと、宇宙を駆け抜ける放射線は波長がどんどん伸び、それにつれて密度は低くなっているということ、そしてより遠くにある天体のほうが年老いているようだということだ。宇宙の中心はどこにあるのかという疑問は実に深淵だが、それに対する現実的な答え──宇宙に中心はない──はおそらくあらゆる答えの中で最も深淵な結論だと言える。