宇宙

2023.08.27 18:00

宇宙の「果て」はどこにある? 「中心」は?

この画像は北天の銀河の上部近辺にあたる宇宙の狭い領域を写したもので、画素ひとつひとつが地図化された銀河を表している。地球から観測できる宇宙は全方向、どこを見ても同じであるが、遠くにある銀河は、地球に近い銀河よりも小さくて若く、まださほど進化していないように見える。SDSS III, DATA RELEASE 8

天体間の距離はなぜ伸びるのか?

1920年代の終わりにはすでに認められたように、提示された証拠は宇宙が膨張しつづけていることを示しただけでなく、宇宙がどのように膨張するかについての予測は、宇宙はさまざまな物質やエネルギーで均一に満たされているという一般相対性理論にもとづく予測に合致していた。宇宙が何でできていて、今日、宇宙がどのように膨張しているかがわかれば、一般相対性理論の方程式を用いて完璧な予測ができる。大きさや分離距離、過去のあらゆる時点での瞬間的な膨張率の観点から、宇宙がどのようなものか、そして、未来のあらゆる時点でどのようになっているかを突きとめることができるのだ。
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しかしながら、もしこれが実際に起きていることだとすると、膨張しつづけている宇宙は、起点から破片をさまざまな速度で飛び散らせるような爆発はいっさい起こしていないことになる。膨張する宇宙は、いわばレーズンの詰まった発酵中のパン生地のようなものだ。もしあなたが銀河のような重力によって結合された物体だとすれば、あなたがレーズンで、パン生地が宇宙だ。パン生地が発酵するにつれて、レーズンは互いに離れていくように見えるが、レーズンがパン生地の中で移動しているわけではない。レーズン自体が動いているわけではないが、ほかのレーズンと距離が離れていくように見えるし、近くのレーズンよりも遠くのもののほうが速く離れていくように見える。



膨張する宇宙に見立てた“レーズンパン”の模型。宇宙(パン生地)が膨張すればするほど、相対距離が伸びる。レーズン間の距離が開くにつれ、光はそこまでの時間に比例して赤方偏移する。膨張する宇宙から予測された赤方偏移と距離の関係は、観測によって証明された。それは1920年代に発見されたことと一致する。NASA / WMAP SCIENCE TEAM


では、この丸まったパン生地がどれくらいの大きさか、われわれはこの中のどこにいるのか、そしてパン生地の中心はどこかは、どうすればわかるのだろうか?
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これは“パン生地”の外を見ることができれば、答えの出る問いだが、実際はパン生地から出て外を見ることはできない。実際、可能なかぎり宇宙を見わたせば、宇宙は3万分の1の範囲まで見事に均一である。130億8000年前に起きたビッグバンによって、われわれは全方向、最大460億光年先まで見ることができ、その最も遠い場所でさえ、宇宙は驚くほど均一なのである。これを前提とすれば、以下の問いの答えが出るだろう。

・宇宙に見立てた“丸いパン生地”はどのくらい大きくなりうるのか。

・われわれには見えない観測不能な宇宙はどこまで広がっているのか。

・観測不能な宇宙のトポロジーと接続性とは何か。

・宇宙に中心はあるのか、宇宙に果てはあるのか、われわれには観測しきれない広大な宇宙の中で、われわれはどこに位置するのかなど、われわれが把握できている範囲をもとに考えうる宇宙の姿はどのようなものなのか。
次ページ > 結論として言えるのは──

翻訳・編集=高橋知子/S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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