だからこそ、私たちは意思決定者として、常に自分自身の動機を探らなくてはならない。
Where(どこに行こうとしているのか?)・Why(なぜそこへ行こうとしているのか?)・How(どういう進み方を良しとするのか?)。
この「ルールの3点セット」を定義することの重要性を前回のコラムで語ったが、組織が行くべき方向を定める前提として、「自分が何によって動かされるのか」を解像度高く知っておく必要があるのだ。
もちろん、動機の根源は、富かコントロールかの二択だけに限定されることではないだろう。
しかし、カウフマン財団のリサーチ(2009年、米テクノロジー業界の起業家549人対象)によれば、起業した理由の75%は富を築くことを動機として認識しており、次いで64%が自分自身の会社を持つこと(=コントロールを得ること)が動機だったと答えている。それ以外の動機もあるが、この2つが圧倒的に大きいものであり、私たちの中で繰り返し衝突を起こすのも大抵はこの2つだ。だからこそ、意思決定者はまずこの問いに決着をつけなくてはならない。
冨山和彦氏は『会社は頭から腐る』(ダイヤモンド社)という書籍でこう語っている。
“さらには産業再生機構での再生の修羅場で見た人間模様。これらを通じて見えてくるのは、ほとんどの人間は土壇場では、各人の動機づけの構造と性格に正直にしか行動できないという現実であった。”
そう、私たちは究極的な場面では、自分たちの動機に従わざるを得ないのだ。私たちは心の底で、何を求めているのだろうか? 何を実現したくて、意思決定をするのだろうか?
しかし、この問いはあまりにも難易度が高い。